『キヨ』You're so evil ! (ページ10)

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拓弥が開けたのは広々とした座敷部屋だった。真ん中に堂々と木彫りのテーブルが置かれ、その回りに5人の実況者さんが座っている。
テーブルには既にいくつかの定番メニューが並べられていた。

襖の開く音でみんなが一斉にこちらに注目した。

｢清くんおそーい！待ちくたびれた〜！｣

そう言って足をバタバタさせる。
この鼻にかかる声はおそらくレトルトさんだろう。

キヨ｢ごめん。ごめん。ちょっと遅くなったわ。｣

そう言うといつもの黒いブーツを慣れた手つきで脱ぎ、部屋に入っていった。

私も仕事用のスニーカーを隣に並べて、取り敢えず拓弥の横の空いた座布団に座り込んだ。

キヨ｢こいつが、みんな会いたがってた百瀬A。｣

私は急に紹介されてどうすれば良いか分からず、軽くお辞儀をした。

レト｢おぉ！この子が！？俺はレトルトって名前で実況動画上げてる高坂琉斗！百瀬さんよろしく！｣

もうお酒が回っているかのようにテンションが高い。

A｢よ、よろしく、お願いします。｣

｢おいおい…！すごい困惑してるじゃんか。｣

戸惑う私を気遣ってくれた黒縁メガネの男性は多分牛沢さん。

牛｢あっ！俺牛沢でーす。皆からは佐々木さんって呼ばれます。｣

やっぱりそうだった。

そして目の前に座っている2人は、拓弥に無理矢理見せられる実写動画によく出ているから断言出来る。

まだ割っていない箸を指で器用に回している、こっちにあまり関心がなさそうな人はヒラさん。
そして長時間待たされて若干苛ついているように見えるのがこーすけさん。

ヒラさんは平田、こーすけさんは前田というらしい。

レトルトさん…牛沢さん…ヒラさん…こーすけさん…

そして残りの1人に目を向ける。
誰だろう？色白で少し垂れた目が特徴的だが…。

キヨ｢誰かわかんねぇんだろ？フジだよ。｣

A｢あ〜。｣

拓弥に心の内を読まれてしまった。

フジ｢ごめんね〜。わかりずらくて。どうもフジです。あっ！藤原です。｣

いつもサングラスにマスクだから気づかなかったけど、この湿っけのある声は紛れもないフジさんだ。

一通りのやり取りが終わると既に12時を回っていた。今日が始まるとそうそうに呑み会も始まった。

近くに並べられていた卵焼きを1口頬張ってみる。

ふと妙な対抗心が出てきて、確かにこのお店の見た目や雰囲気は素敵だけれど、味はうちの方が格別に美味しいと思ってしまう。
それともその対抗心が私の味覚を狂わせているだけなのだろうか。