『キヨ』You're so evil ! (ページ5)

今日:14 hit、昨日:1 hit、合計:10,825 hit

ё4 ページ5

キヨ｢今夜のご予定は？｣

私が最後に食べようと大切に取っておいたポテトサラダの1口をたいらげたことろで拓弥がそう聞いてきた。

A｢これからお風呂に入って寝るだけだけど。｣

キヨ｢じゃあ、俺泊まってもいいの？｣

A｢ダメに決まってるじゃん。付き合ってる訳でもないのに。｣

拓弥は知っている。
私にこのあと予定なんてないってことや、うちに泊まるのを許可するわけないってことも。

ここまでは必ず毎日交わす会話だった。
そうしたら、拓弥はまた明日と言って家をあとにする。
今日だってそうなるだろうと思っていた。

キヨ｢俺はお前と付き合ってるつもりなんだけど…？｣

思ってもみない言葉につい、へ？という間抜けな声が出そうになるが、動揺を無表情の裏に隠し、拓弥を見つめた。

これはただの揶揄いか…？
それとも本気なのか…？
真剣な声色と眼差しから察するに、多分拓弥は本気だ。

A｢私は拓弥と付き合っているつもりはないよ。｣

キヨ｢じゃあさ、俺とつきあってよ。｣

初めての告白…。
それなのに全く胸が高鳴らない。

A｢ごめん拓弥。私は付き合うとかよくわかんないや。｣

これは私の本心。
誰かを好きになるとか、誰かと付き合いたいと思う気持ちとか、よく理解できない。

キヨ｢別に今は分からなくていいよ。付き合って行く中で知っていけばいいんだから。｣

今日の拓弥はやけに執拗い。
執拗いのにどこかあっさりしている。

付き合って行く中で…？
本当に私は知ることが出来るの？
いや、きっと永遠に不可能だと断言出来る。
それに中途半端な気持ちでは、拓弥をたくさん傷つけてしまうだろう。

そんなことを悶々と考えていると、拓弥は痺れを切らして立ち上がった。

キヨ｢ごめん。今日はしつこかったよな。じゃあまた明日。｣

そう言って玄関の方へスタスタと歩いていった。

不思議な人。初めて居酒屋で出会ってから半年、こうやって私に関わってくるけど深く詮索もしてこない。

私は衝動に駆られ、拓弥の背中に問いかけた。

A｢ねぇ拓弥。どうしてあの時私に話しかけたの？｣

拓弥は私の方に振り返ると、腰に軽く手を当て、少し考えて言った。

キヨ｢どうして？かぁ…。なんでだろうな。俺とお前の生い立ちが似てたから…とか？｣

拓弥はそう意味深な言葉を残し、今度こそ、家をあとにした。
カチャっと鍵のかかる音がダイニングに響いた。