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キヨ｢おーい！大丈夫か？お前ほんとに酒弱いんだな。｣
耳元で拓弥の声がしてハッと我に返った。
実況者さんたちとの呑み会のあと、拓弥に家まで送られていたことに気付く。
あの日と同じように、拓弥は私の腰に手を置いて、そっと支えてくれる。
キヨ｢なんか悪いな。こんな遅くなっちゃって。｣
A｢大丈夫…。明日休みだから。｣
キヨ｢俺は明日イベントの打ち合わせだわ〜。｣
ゲーム実況のイベントのことだろう。ゲームのイベントだなんて私には想像もつかない。
キヨ｢お前も来る？明日じゃなくて、来月のイベントの方。｣
私は今までライブやイベントに参加した経験がない。人混みや行列に並ぶのは苦手だし、みんなその場のノリに流されて楽しんでいるような気がして、私1人冷めた気分になってしまいそうだから。
どう返事しようか悩んでいると、拓弥が私の頬を軽く引っ張った。
キヨ｢はい時間切れ〜。イベント来るの決定な。来月の25日空けといて。｣
時間制限があるなんて聞いてない。私がムスッとした顔をすると、拓弥は面白そうに笑った。
拓弥に身を委ねてしばらく歩くと、見慣れた古めかしいアパートが見えてきた。
半年前のあの日と違うのは、拓弥が玄関までではなく部屋まで連れて行ってくれること。
私を椅子にそっと座らせ、コップに水を汲んで差し出してくれた。
キヨ｢ほら、これ飲んどきな。｣
A｢あ、ありがとう。｣
一気に飲み干すと、身体中の異物が溶けて浄化されていくかのように、気分が楽になった。
その時、部屋に電話の着信音が鳴り響いた。
拓弥のスマホだった。
画面を見て相手を確認する。
キヨ｢ごめん。ちょっと出てくる。｣
そう言って廊下に出ていった。
廊下に出たところで拓弥の声量ではこちら側に簡単に聞こえてしまう。流石に話の内容までは聞こえないが…。
口調は多少荒いが、低くて男らしい声。
急に猛烈な眠気が襲ってきた。時計はもう2時半を指している。私は心地よく、包み込まれるような眠りに吸い込まれて行った。
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作者名：雪ノ宮霜 | 作成日時：2018年2月14日 21時
