ё13 ページ14
その男性に2度目に会ったのは、それから数日後のことだった。
全身の倦怠感と頭痛でふらふらする体を必死に動かしてアパートに帰っていると、数日前の男性が前から歩いてくるのが見えた。
その男性もこちらに気づいたらしく、少し驚いた顔でこちらに駆け寄ってきた。
｢だ、大丈夫…？？｣
A｢はい…。大丈夫です。ちょっとした体調不良なので…。｣
そう言って道を進もうとすると、サッと腰に手が当たる。
｢いや、どう考えても大丈夫じゃないでしょ。｣
その男性は腰に手を回すと、危なっかしい私を支えてくれた。
｢多分熱中症だろうな。タクシー拾ってあげるからそれで帰りなよ。｣
そう言って大通りへ出ようとしたので、私は力なく拒んだ。
A｢あの…家すぐそこなんで、歩いて帰れます…。｣
｢だからその体じゃ無理だよ。｣
男性は呆れたように言った。
｢しょうがないな…。家まで送るから場所教えて。｣
私はどうするべきか戸惑った後、この男性を頼ろうと思った。きっと悪い人ではない。反応からしても今日会ったのは本当に偶然なんだろう。
A｢この路地を進んだところにある古いアパートです。｣
その男性は私の歩幅に合わせてゆっくりと歩いてくれた。
そして玄関まで私を送ると、そのまま帰って行った。
家に着いてベッドに倒れ込む。
(熱中症かぁ…。)
仕事の疲れもあるだろうけど、インスタントに頼ってばかりの偏った食生活では、こうなってもおかしくない。
少し落ち着いてくると、今度は家のチャイムが鳴った。こんな夜遅くに誰だろうと疑問に思い、ドアを開けるとさっきの男性がコンビニのビニール袋を持って立っていた。
｢はい、これ。｣
ビニールの中身は保冷剤に熱さまシート、アクエリアスとひんやりしたゼリーが入っていた。
｢あと、これも。｣
そう言ってポケットから取り出した紙切れにはその男性のものと思われる連絡先が書かれていた。
｢もし何かあったら連絡して。じゃあ、また。｣
お礼も言えず呆然と立ちすくむ私を置いて、今度こそ男性は家をあとにした。
拓弥が私の家に通うようになったのはそれからのことだった。
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作者名：雪ノ宮霜 | 作成日時：2018年2月14日 21時
