【キIヨ】恋をした

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#牛沢side

牛「あー、なんでなんもできねーんだろ」

酔っ払ったAちゃんを送っていって、でもなんもできなくて。
そりゃ無理矢理手を出したくはないけど、だけど。
何こんなに慎重になってんだろ。

なんとなくわかる。
なんとなく、Aちゃんが見てるのは、俺じゃない、って。

俺に見せてくれる顔は、なんだろ、自然は自然だけど…苦しそうな顔見たことねー。
俺には、言えねーのかな、そういうこと。



家でごろごろしてれば、電話。
画面を見て、え？って。

牛『もしもし、なんかあった？』
貴『突然すいません。あの…』

声だけでわかる。
きっとそれは、好きだから。

牛『なんか言いたいことあるの？』
貴『…あり、ます』
牛『俺は、どんな内容でもいいから、嘘はつかないで欲しい』
貴『…はい。あの、会って、話したいです…』
牛『家行っていい？』
貴『すいません、お願いします…待ってます』

彼女のこの声のトーン。
きっと、告げられる内容なんて一つしかなくて。

どうせなら昨日もっと抱き締めてたらよかった。
恋人繋ぎだって店出たときからしとけばよかった。
そのまま泊まってけばよかった。

そんなことしたって変わらなかっただろうけど。



重い身体を起こして昨日も来た彼女の家に向かう。

道中、きっと彼女から伝えられるであろうことの原因のやつに会う。
こいつはまだわかってねーけど。
だから言ったんだよ。
お前には勝てる気がしねー、って。




牛「お待たせー」

インターホンを押して、出来るだけ平常心を保って声を張る。

貴「！叫ばなくても大丈夫です！」

がちゃりとドアを開けながら焦る顔、そういうとこも、全部好きなのに。

貴「中、どうぞ」
牛「玄関でいーよ」
貴「そんなの申し訳ないです…」
牛「…男はね、女の子が家にあげてくれたら、何もせずに帰ったり出来るほど、立派な脳が無いみたいで。Aちゃんの話したいことなんとなくわかるからさ。家あげるのは、あいつだけにしてあげなよ」
貴「牛沢さん…？」

掠れた、寂しそうな声。
駄目だって、期待しちゃうから。

牛「キヨのこと好き？」
貴「…な、んで」

ああ、やっぱり、否定しねーんだ。

牛「俺にはさ、たくさん笑ってくれたけど、怒った顔とか辛い顔とか、そういう隙は見せてくれなかったでしょ？キヨには自然と見せてて、きっと、心許してんだな、って。でも、Aちゃんが気付かないなら、俺を見てて欲しかった。意地悪してごめんね？」

俺今笑えてるかな。

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