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放送が始まれば、それ用の顔をしているキヨさん。
この前裏の顔を共に見せてくれたレトルトさんに牛沢さんもいる。
後、フジさん、か。
あの人は初めましてだ。
レトルトさんと牛沢さんのチャンネルも担当してるものの、まだあまり放送にきちんと顔を出したこともないから、話したことはないに等しい。
はー、面倒な日だ、なんて。
絶対に言えないけど。
はたして、ここに転職したことはよかったのか、そんなことがふと脳裏によぎる。
カメラには写らないところでずっと放送を見ている。
きっと、彼らの裏のことを知らなければ、もっと純粋に笑えたのかもしれない。
それでも今は、私のことを批判していた三人と知らない誰か、という認識でしかなくて、笑うことなんてできなかった。
次はどんなセットを作ろうか、おまけみたいに毎回こっそり作っている小物はどうしようか、そんな関係ないことが頭のなかをぐるぐるとめぐる。
彼らの放送も終盤に入り、ゲーム画面からまたセットと彼らを写す画面へと戻る。
レ「セット可愛い?これ、俺とうっしーのとこもおんなじ人がやってくれてる!」
ああ、可愛いってコメントでも流れたのかな。
それなら、まあ、仕事してよかったって思えるよ。
見てくれてる人にとって、セットなんてただの彼らの引き立て役なのに、そこに注目してくれるなんてありがたい。
フ「んー?あれー?」
コメントを見ながらフジさんが指差したのは、セットの角にこっそりと置いた、私の作った小物だった。
立ち上がったフジさんはそれをそっと持ってくる。
フ「これ可愛いよねー!俺家持って帰りたいもん」
牛「とか言ってすぐ捨てんだろww」
フ「いやまじ大切にするから」
キ「そんなんいらねーだろ」
レ「可愛いけど置いとくとこないからなあ…」
フ「俺が貰うから三人はいらなくていいんだよ!」
けたけたと笑っている。
フジさんの言葉が、"放送用"なのか見破れる能力なんかなくて、素直に嬉しくなってしまって、頬が緩んだのも、一瞬だけその頬が濡れたのも、気の緩みだ。
すぐに顔を引き締める。
こんな言葉で浮かれたら駄目だ。
きっと、終われば彼も、こんなものに見向きもせずに帰っていくのだろう。
放送が終わる少し前に、一旦スタジオを後にする。
彼らの素に戻った表情は、あまり見たくない。
芸能界を彷彿させるそれは、好きではなかった。
フ「小田さん!」
呼ばれた名前に振り返る。
あなたはなんでここに来たんだろう。
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煎茶(プロフ) - コメント失礼いたします。三人の長所が絶妙なバランスで描かれていて至高の作品でした。この小説との出会いに感謝したいです。執筆お疲れ様でした。 (2018年8月27日 1時) (レス) id: ea34eab2cb (このIDを非表示/違反報告)
ゆる(プロフ) - こねりさん» ありがとうございます(;_;)!!!内容が良い悪いはなんともいえないですか、いくつかお話は書かせていただいていますので、ぜひ読んでいただけたら嬉しいです(*^-^*) (2017年10月23日 2時) (レス) id: 1e43dca40b (このIDを非表示/違反報告)
こねり(プロフ) - とっても面白かったです...!!うっしーがいい人すぎで、思わず読んでて泣いてしまいました...。新作の方も読ませていただこうと思います!! (2017年10月16日 23時) (レス) id: 8a30c5e030 (このIDを非表示/違反報告)
。。*ましゅまろん*。。 - ゆるさんの小説みてたら、下の告知がいないないばぁ!で笑いました笑 (2017年3月29日 15時) (レス) id: b56a98098d (このIDを非表示/違反報告)
ゆる(プロフ) - 蒼乃さん» わかります!!!私も、他の方と交流すること全然なくてwwたくさんコメントでお邪魔しちゃいますね! (2016年12月21日 1時) (レス) id: 2348e913dd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆる | 作成日時:2016年9月13日 3時