【番外編】居場所1(12視点) ページ26
とりなん視点
〇二年前、五月〇
俺は自分の名前が嫌いだった。
所謂キラキラネームってやつ。下の名前を呼ばれると、鳩尾に痛みが走る。俺は繊細だからな、こう見えて。
自分をラベリングする第一物が、常識から大きく外れたサムシングであるという事実。それは、少年とりなんの自信を失わせるのには十分だった。
高一の五月。普通なら人生でいっちゃん楽しい時なんだろうな。俺はクラスに友達もいなければ、部活にも入っていなかった。ただ、機械的に登校し、授業を受け、下校する。そんな毎日の繰り返しだった。
……あの時までは。
『君、一年生?ゲーム制作部に入らない?』
声の主は、何やら怪しい被り物の二人組だった。関わっちゃいけない種類の人間だ。そう思って逃げようとしたが、俺はゲーム制作部の部室までうまいこと誘導されてしまった。
『や〜、俺ら二人になっちゃったんだよ、この部』
『はぁ……』
黒いバンダナのようなものを巻いた奴が笑う。二人になった経緯が気になって仕方ないが、生憎そんな度胸は持ち合わせてない。
『君、ゲーム好き?好きだよね、そんな顔してるもん』
もう一人の、鳥の頭蓋骨の面をした奴が身を乗り出してきた。
『好き……ですけど』
一応そう答えたが、すぐに後悔した。子供の頃は人並みにやったが、今はほとんどやっていない。
『好き』と答えたのは、上級生の二人が俺に期待してるのがビリビリと伝わってきたから。それを裏切るのは、申し訳ないと思った。
『まじ?すげぇなテラゾー。ビンゴじゃん』
『そうでもないって。この時期に、誰ともつるんでない眼鏡君は大体オタクって相場が決まってる』
テラゾー、と呼ばれた方が得意げな顔(実際はよく見えないが)をした。……遠回しに、ディスられたような。
『ここはね、ゲーム制作部。と言っても、今はゲームを作るというよりプレイしてるだけなんだけどね』
『活動は自由。参加も自由。……なあ、俺たちを助けると思って入部してくれないか』
『……助ける?』
聞くところによると、部員が三人に満たない部活は廃部になってしまうそうだ。三年生の彼らは部活の存続のために、俺を部員にしたいらしい。
それ、俺じゃなきゃだめですか。喉元まで出かかった言葉を飲み込む。
『頼むよ』
『お願いします』
俺が入部したところで、来年はどうなるんだろう。返事を躊躇っていると、テラゾーと呼ばれた男が口を開いた。
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学生 - 更新はストップされてるのですかね‥続き(?)というか番外編が見たいです! (2019年8月23日 14時) (レス) id: 7a8267348b (このIDを非表示/違反報告)
ミカケヒトシ(プロフ) - りびとさん» 回想編が必要か不安になっていたところなので、そう言っていただけると嬉しいです。季節の変わり目なのでお互い気をつけましょう! (2018年9月7日 18時) (レス) id: f1553b8c91 (このIDを非表示/違反報告)
ミカケヒトシ(プロフ) - 空鳥さん» コメントありがとうございます。今の話が終わったらその二人パートの予定です、お楽しみに…… (2018年9月7日 18時) (レス) id: f1553b8c91 (このIDを非表示/違反報告)
りびと(プロフ) - 初コメ失礼します。更新ありがとうございます!今回もとっても面白いです。部員達の過去話も沢山聞けて嬉しいです!次の更新楽しみにしてます!!お身体壊さない程度に頑張ってください!!! (2018年9月2日 1時) (レス) id: f7d7becc38 (このIDを非表示/違反報告)
空鳥 - 初コメ失礼します!めっちゃ面白くてすごく好きです…!!つきよちゃんとズズくんの関係もこれからどうなるのかとか、こいろちゃんどうなったのかとか、気になること多くてやばいです…!!更新頑張ってください!ずっと待ってます! (2018年9月1日 22時) (レス) id: 03b59041ba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミカケヒトシ | 作成日時:2018年4月6日 17時