とある小さな悪食の小さな人生という名のお話

『僕ハ悪クナイ』 ページ20

自分が皆と出会った時の事を鮮明に覚えているかと聞かれたらそうではない。


とにかく、色々なヒトビトに会って
たくさん挨拶して、驚かれて

……小さいと言われた。


自分も好きでこういう低身長なのではないのだが、小さくて可愛いとか、ﾓｸﾞﾓｸﾞしてるのを見ると癒されるだとか、悪戯っ子だとか。


悪戯っ子は…まぁ、いいだろう。悪戯は楽しくてやっていたから。

いやでも、それ以外は論外だと思う。可愛いって言われても複雑だし、もちろん癒し担当になる気はサラサラない。



「……はァ〜…」

『どうしたんだい？……えっと…うーん…大食いちゃん？』

「イヤ、名前違うヨ……久遠ダヨ、くまー」

突然隣から降ってきた声の主を振り返りもせずに、今日会った人物を呼んだ。



『あ、そうそう！久遠ちゃんだ！』


彼はクマー・マクラ。

黒い学ランに身を包み、色々と意味深な事を言いつつも大した意味もない話し方をする。


「セメテ、名前くらいは覚えてほしかったヨ」

『なんだって！？そんなやつがいるのかい？頼朝ちゃん、そんなやつがいるなら教えてくれよ！！僕が根性を叩き直してあげよう♪』

「イヤ、頼朝って死んだヒトビト……間違ってルのはくまーダヨ」


そこで律儀に『なんだって！？』と驚いてみせるも、わざとらしいことこの上ない。

『ごめんね♪いつの間にか前の隣人の恋人の親の先生の上司の親友の息子の従兄弟の人と間違えてたみたいだ♪』


クマーとはとても面白く変わり者だ。

『だから、僕は悪くない』

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