♦20 ─ 事情。 ページ20
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家に帰りたくないと、いつも思う。伊波くんに零したあれだけは、本音だったのかもしれない。どれが本音で、合わせた嘘なのかなんて、私にはもう分からないままだけど。
お母さんは同じ言葉をいつも投げかける。｢お前なんかが存在しているから。｣という言葉は、いつまでも私を苦しめるための呪いなのだろう。お父さんにも同じことを言われたが、ふらりと姿を消したことを覚えている。
それと一緒に消えた、台所にあった三つの包丁の内、一つも行方をくらませたまま。
幼い頃はよく分かりもしなかったが、今ではわかる。そういうことなんだろうな、と。小さい頃から根付いたような、存在否定の言葉は、私の心をいとも簡単に苦しめる。必要とされたい、と強く願うのもこれのせいだと話したとて、誰にも理解はされないのだろう。
いいね、君たちは。望まれて生まれてきて。そのまま、大人になるまでの未来が、鮮明で。そんな妬ましいような感情を抱く私もまだ、人間だったらしい。
｢今日は？お呼ばれしてないの。こんな時間まで、話し相手付き合うの珍しいから。｣
｢お呼ばれ、ないですよ。最近、回数が減りつつあるんです。だから、新しい人だとか探さないとな、とは思ってます。｣
｢また、夜に独り待ちぼうけ？｣
｢はい。｣
｢はい、って、河橋。｣
｢拠り所は多い方がいいっていったのは、オリバー先生でしょう？｣
心の拠り所は多い方がいい。そういったのは目の前の紛れもないオリバー先生だ。だから、私は拠り所を増やしているだけ。そうすれば、他の人に必要とされなくても、別の人が必要としてくれるから。私の延命措置に違いない。頬から手を離しては、するりと抜け出す。けど、オリバー先生は私の手首を掴んで離す素振りもなかった。
男性らしい大きな手、じんわりとした温もりと共に、熱を帯びる。
寂しいと感じてしまうのは、どうしてだろうか。ほんの少し違えば、もう少しまともな未来でもあったのだろうか。他の人たちは、明日にさえ希望を見出し、五年後の人生設計までしているのに、私は今日の夜さえも希望なんか見えない。
生きるということが、こんなにも難しいことなんて知らずにいた。今も尚、記憶の片隅に残るような声と言葉。生きていいんだと、存在してていいんだと肯定されたいことさえも、我儘というのなら、私はどうするべきなのだろうか。なんて、考えても無駄か。
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狸。(プロフ) - あさきさん» コメントありがとうございます〜❕そう言って貰えて嬉しいです🫶🏻ドロっとしたような感情だとか考え表現出来ているようで、嬉しいです🫶🏻チマチマとですが、更新していきたいと思います❕ (3月14日 19時) (
レス) @page11 id: d70759b3bd (このIDを非表示/違反報告)
あさき(プロフ) - ドロドロとした考え凄い好きです！！！(表現の仕方、すみません)続き楽しみにしてます！ (3月14日 17時) (レス) @page10 id: 2e9509526a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：狸。 | 作成日時：2024年3月8日 3時
