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♦19 ─ 生徒。 ページ19









 生徒と教師、子供と大人というような線引きを、簡単にも緩めるような人だった。オリバー先生は親しみやすい教師、というものがあるせいか、わりとローレンくんたちと絡んでいるのを思い出す。だからこそだろうか、私にも気にかけているところを見て、ローレンくんが聞いたのは。そんなの、なんの意味もないよ、と今度言うべきか悩ましいほどに。日が、少しずつと沈んでいく。夜へ向かっていくのを、私は見つめていた。


 生徒と教師という関係性に線を引いておきながら、なぜオリバー先生たちは私に手を出すのか。というのも、別に意味なんてない。なんでだったっけな、と思い出そうとするけど、浮かばない。


 ただ、私が物寂しそうな顔をしていたか、なにかだった気がする。気にかけられて、触れて、知らぬ間になんてことは何度もある。二年生になってからだったかな、と思い出しつつ、オリバー先生を見下ろしていた。椅子に座りながらこちらを見上げているから、なんだか変な気分になる。見上げることが多かったせい。手を伸ばし、さすりっと髪の毛に指を通す。







「お母さん、元気そう?」

「暫く家に帰ってないので、分かりません。」

「それもそうか。」

「顔を合わせたら、多分、物投げつけられるのは分かってますし。」

「そりゃ、家に帰りたくもなくなるよね。」

「それに、愛なんて存在してないとも思います。」

「出た、愛。」

「永遠の愛を誓い合ったのに離婚したり、冷めたりしてる時点で、おとぎ話のような真実の愛なんて、存在しないと思いませんか。」

「はは、そうかもね。」







 茶化すようなことば、ひとつ。国語辞典で愛をひけど、意味なんてものは理解できないものだった。手のひらに擦り寄るオリバー先生を見下ろしながら、そんなことばかり考える。


 家族愛とか、親子愛とか、そんなものだって存在しないのだ。それなら、恋愛においての愛も、存在しないのだろう。


 ゆらり、歪んだ。いくらぐちゃぐちゃに混ぜ込んだ絵の具に、白を混ぜたとしても、元の色には戻らない。それと同じようにと、壊れた心は初めの綺麗な状態にもなり得ない。


 酷く、寒いなと感じる。オリバー先生の頬に両手を添えて、上を向くようにと促して。首をかしげ、柔らかく笑うものだから、子供のようにと思えた。生徒という枠組みに収まりながら、お互いの境界線は酷く曖昧だったと思う。









♦20 ─ 事情。→←♦18 ─ 先生。



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狸。(プロフ) - あさきさん» コメントありがとうございます〜❕そう言って貰えて嬉しいです🫶🏻ドロっとしたような感情だとか考え表現出来ているようで、嬉しいです🫶🏻チマチマとですが、更新していきたいと思います❕ (3月14日 19時) (レス) @page11 id: d70759b3bd (このIDを非表示/違反報告)
あさき(プロフ) - ドロドロとした考え凄い好きです!!!(表現の仕方、すみません)続き楽しみにしてます! (3月14日 17時) (レス) @page10 id: 2e9509526a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狸。 | 作成日時:2024年3月8日 3時

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