♦16 ─ 歌詞。 ページ16
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｢あれ、Aちゃんって、音楽とか聴くんだ。意外かも、｣
｢特段好きとかじゃないですよ。｣
｢え、じゃあなんで？｣
｢………………この前、後輩くんにオススメされたから、聴いてるだけです。けど、しょーじき、歌詞の意味とか伝えたいこととか、ピンと来なくて、｣
｢そうなん？んは、音楽聴いてないでこっちで、たのしーことしよ。｣
｢ん、甘い匂い、しますね。｣
｢香水のにおいじゃないかな？Aちゃんはー………、色んな匂い、する。｣
｢なんですか、それ。｣
イヤホンを耳にはめ込みながら、軽いような姿でベッドに腰を掛けていた。伊波くんがオススメだと教えてくれた曲を聴きながら、彼のことを待っていれば、ベッドが沈む感覚。ゆらり、と揺れるカーテンのようにと、静かに私の隣へと来る。見上げたのなら、手を伸ばされてはイヤホンを外される。意外、の言葉に好きとかではない、とハッキリと告げていた。
そもそも、私の好きとはなんだろう。私は、何が好きなんだろう。それをふと考えても、何も浮かばなかった。何か、好きなんだっけ、私。
好きなものを好きでいよう、なんていう歌詞とか、ラブソングとか聴いてもピンと来ない。訴えかけるような歌詞だって、私の心に響くことは無かった。空っぽの心にいくら注いでも、全て零れてしまうようにと、意味をなさない。それに思わず、失笑。はは、と軽く笑いつつ、手を引かれては、ベッドに押し倒される。ぎし、と鳴り響いた軋む音は、聞き慣れていて。
唇を、押し付けられる。ふと香る甘い匂いは、あのことは全く違うことを感じる。香水、と思いつつ、爽やかな柔軟剤を思い出していた。色んな匂いがする、て言葉に少しばかり心臓をどきりと跳ねさせる。別に、他の男に抱かれているということなんて、バレたってどうでもいいくせにね。
｢そーだ、俺の香水あげるよ。女の子って、こーゆーの好きじゃない？｣
｢わ、たしは、ふつーですけど。｣
｢んはは、いつもAちゃんの好み、わかんないや俺。｣
｢あなたが好きなものが、私も好きですよ？｣
｢俺、そーゆー子大好き。｣
軽いような愛を囁いて、軽いような快楽に溺れていく。こんなんじゃなかったな、でも。伊波くんは、軽いような愛なんて囁くこともなかったな。今なら、おすすめしてくれたラブソングの歌詞の意味、分かるかな、私にも。………なんてね。
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狸。(プロフ) - あさきさん» コメントありがとうございます〜❕そう言って貰えて嬉しいです🫶🏻ドロっとしたような感情だとか考え表現出来ているようで、嬉しいです🫶🏻チマチマとですが、更新していきたいと思います❕ (3月14日 19時) (
レス) @page11 id: d70759b3bd (このIDを非表示/違反報告)
あさき(プロフ) - ドロドロとした考え凄い好きです！！！(表現の仕方、すみません)続き楽しみにしてます！ (3月14日 17時) (レス) @page10 id: 2e9509526a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：狸。 | 作成日時：2024年3月8日 3時
