♦12 ─ ギター。 ページ12
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夕焼けに照らされた楽器のお店は、どうにも雰囲気を纏っていた。ギターやベース、ドラムと言ったように多くの楽器が並んでいる。高いような値段を見て｢まだ暫く買えなそうだな〜………。｣とぼやく伊波くん。それを横目にしつつも、ギターを手に取ってはどう？と見せられるから、その時の私はなんて答えるのが正解なのか、分からずにいるほどに。
欲しいのっていう問いかけに、いつか買いたいとは思ってますよって答えられる。ちゃんとした答えに、私はなんとも言えなくなる。
揺らぐような値札を見つめた。別に、買えないわけじゃない。そのぐらいのお金はある。だってずっと貢いできたから。バンドマンの元彼にも、その他の元カレやそうでない人たちにも。高いような服や香水といったものだって買ってきた。宝石が欲しいなら、ちゃんとした物だって買ってきたのだから。
｢バイトしてるんですよ、俺。だから、もうちょい貯めて買おうかなって。｣
｢欲しいのは、このギターなんですか。｣
｢え？あぁ、はい。このギターです。だってめちゃくちゃカッコいいと思いません？｣
｢伊波くんに、似合うとは思います。｣
｢うぇ、………A先輩ってそーゆーの、すぐ言えるタイプなんですね。｣
｢伊波くんだから、言いました。｣
｢っ、はは、めちゃくちゃ狡すぎでしょ……………。｣
ギターを、元あった場所に戻しながら言う伊波くん。間違えないようにと、問いかける。生きていますかの問いかけに、呼吸が出来ないと答えていた。似合う、て言葉を零した。じわりと頬を赤く染めたのか、それが夕焼けのせいなのかは私には分からずにいる。狡すぎ、という言葉に対して、私はどうしたらいいか分からないまま。
このままだと家に帰ることになる、て思った。帰りたくないな、て素直に甘えられないのは、昔からの癖なのだろう。強く抱き締めて欲しい訳でもないけど、それでも今は強引に奪い去って欲しかっただけ。
そんなこと、言えるわけもない。ふと、通知が響く。ミクロの電子端末を見つめては、画面に視線を移した。来れない？ていう言葉の羅列を見つめては、衝動的に駆け出しそうになった。それを察しのか、伊波くんに手首を掴まれては、見下ろされる。
心臓がびくり、と跳ね上がった。夜明け空が、私を見下ろしたまま、夜闇に溶け込みそうになるのを、見つめるだけだった。
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狸。(プロフ) - あさきさん» コメントありがとうございます〜❕そう言って貰えて嬉しいです🫶🏻ドロっとしたような感情だとか考え表現出来ているようで、嬉しいです🫶🏻チマチマとですが、更新していきたいと思います❕ (3月14日 19時) (
レス) @page11 id: d70759b3bd (このIDを非表示/違反報告)
あさき(プロフ) - ドロドロとした考え凄い好きです！！！(表現の仕方、すみません)続き楽しみにしてます！ (3月14日 17時) (レス) @page10 id: 2e9509526a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：狸。 | 作成日時：2024年3月8日 3時
