♦11 ─ 後輩。 ページ11
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｢河橋先輩って、いつも早く帰ってるイメージあるんですけど、今日は遅いんですね。｣
｢気になるんですか。｣
｢気になっちゃ、ダメですか？｣
｢…………ただの、お呼ばれしてるだけですよ。ただ今日は、お母さんが家にいるから。｣
｢お母さんが？｣
｢だから、帰りたくないんです。お呼ばれもないから、尚更。｣
揺らぐような星空がそこにあった。伊波くんはふとした疑問点をこちらに問いかける。それに、変わらぬようにと気になるのか、と質問に質問で返せば質問で返されてしまう。食えない後輩、と思いつつ、帰りたくないって言葉を零していた。母親が家にいる、だからこそ帰りたくない。こんな日は誰かに呼ばれたいという我儘も、きっと世界は認めてくれないのだろう。
伊波くんは、瞳を震わせていた。自分よりも大きな手を伸ばされ、そして緩んだような髪の毛を耳にかけられる。
じんわりとした温もりを求めたくなっては、その手に擦り寄った。自身よりも大きな手、高い身長、温もりに寂しさを感じてしまうほどだ。夕焼けに照らされた二人だけの世界は、どうにも寂しさを残している。だからこそ、尚更に、このまま帰りたくない。けど、そんなことを頼むつもりもない。
ねぇ、それで、後輩くん。キミは、私をどうするつもりなの。
｢A先輩、｣
｢ん。｣
｢じゃあ俺の買い物に付き合ってくださいよ。｣
｢…………買い物？｣
｢そ、買い物。楽器見に行きたいんです。バンドマンの彼氏さんが居たんでしょう？なら、どれがいいとか見てくださいよ。｣
｢必要、ですか。｣
｢え？｣
｢それは、私だから頼んでますか。それとも、たまたま私がいたから、頼んでますか。｣
｢……………A先輩だから、頼んでます。A先輩が、いいんです、俺。｣
後輩も、歳下も、悪くは無いのかな。ぼんやりとそんなことを、思った。欲しい言葉を容易くくれるから、私はその手を取る。甘いような声に、思わずふふって笑ってしまった。帰りたくないと擦り寄れば、暇つぶししましょうと提案されてしまう。いいね、悪くない。うん、しよっか。
通知は、鳴らなかった。今日は誰にも求められないと思っていた寂しさを、伊波くんは埋めるようにと笑っている。馬鹿だなぁ、ほんとに。ハズレくじばかり引きながら、私の手を取り、音楽室から連れ出してくれたのは、君だった。
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狸。(プロフ) - あさきさん» コメントありがとうございます〜❕そう言って貰えて嬉しいです🫶🏻ドロっとしたような感情だとか考え表現出来ているようで、嬉しいです🫶🏻チマチマとですが、更新していきたいと思います❕ (3月14日 19時) (
レス) @page11 id: d70759b3bd (このIDを非表示/違反報告)
あさき(プロフ) - ドロドロとした考え凄い好きです！！！(表現の仕方、すみません)続き楽しみにしてます！ (3月14日 17時) (レス) @page10 id: 2e9509526a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：狸。 | 作成日時：2024年3月8日 3時
