Violeta 2

95 ページ45

『いらっしゃいませ…あら、マシューくんにAちゃん』


ハンビンのお母さんに迎えられてお店を入ると、先日よりもたくさんのお客さん。ハンビンもお手伝いしているため忙しそうだ。2人ともよく来てくれたわね、なんて嬉しそうに微笑むハンビンのお母さんに、久しぶりに会えてうれしいですとマシューはにこにこしていた。


席に案内していただいてメニューを見る。前回サービスで頂いたシカゴピザがチーズはとろとろ、ほんのりと広がる甘さでとっても好みのお味だったので私はそれにしよう。マシューは悩みに悩んでクロッフルに決めたそうで、お腹に余裕があったらデザートにケーキも頼もうね、話していた。すみません、とマシューが声を出すと、それに反応して駆けつけてくれたのはハンビンだった。


『ご注文お伺いしまー、マシュー！いらっしゃい、よくきてく…』


マシューの方を見てぱあっと笑顔になったあと、私の方に目を向けたハンビンは、私に気づくと喋っていた言葉をやめてしまう。マシューはヒョン？と声をかけてみるけれど今の彼には届いていないみたいだった。


『ハンビンに会いたくてきちゃった』


『すぐにわかる嘘つかないで、次は1人で来てくれるって言ってたじゃん。きっとマシューに誘われてついてきたんでしょ』


ヒョンすごい、大当たり、なんて何も気にしないでにこにことするマシューをハンビンは責めることが出来ず、また小さくため息をついた。それで、何を頼まれますか、と店員モードに戻ったハンビンにメニューを言うと、かしこまりました、と取ってつけたような笑顔を見せられる。


『僕も手が空いたらすぐにここにくるので、それまではどうぞごゆっくり』


そう言って店の内部へと戻って行ったハンビンを後ろ目に、僕とAヌナとの時間なのに、といじけた様子を見せるマシュー。3人なら楽しさも倍増だよと声をかけるも、彼は目を伏せて口をふくらませる。


『カフェは3人で楽しむけど、その後は2人で本屋さんだからね』


『無理に着いてきてくれなくてもいいんだよ、せっかくの休暇期間だし』


『無理してるんじゃなくて、少しでもAヌナと一緒にいたいって思ってるの』


お水をゴクリと飲んだあと、私の方に見せつけるようにしてわざとらしくほっぺをぷくっとさせるマシュー。その様子が可愛くて指で頬袋を潰すと、ぷすっと言う音ともにいつものマシューの顔が現れた。

96→←94

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す