Violeta 2

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『Aちゃん、泣いちゃってるの？泣かないで〜』


とことこと私の元にやってきて制服の裾で涙を拭ってくれる晴翔。そう言ってる晴翔もどこか目元は潤んでいて、晴翔だって泣いちゃってもいいんだよ、と言うと綺麗な涙を流しながら感動しちゃった、と話していた。そんな晴翔の涙を今度は私の裾で拭って、お互いの制服はびちょびちょになってしまう。


スタッフさん達に制服返すの怖いね、なんて笑いながらゆっくりとステージを降りていく。もう、ここに戻ってくることはないのかな。
割り切ったつもりでいても、この道が正解だったのかって、未だに不安になる。
いつかのインタビューでも答えたけれど、今の地点が出発点か最終点かなのかなんて、私には分かりえないから。
後悔も、不安も、全てここに置いていこう。
この場でデビューする必要があると、私自身が私自身を証明させよう。



最後の一段、急に止まった私に隣にいた佳汰、後ろにいるハオオッパやハンビンは小首を傾げ、前の晴翔はAちゃん何してるの？なんて聞いてくる。
少しだけ意気込んで、よし、と小さく呟いて佳汰の手をぐっと握る。せーの、と囁くと、私の意図を察した様子で、一緒に最終段を飛び降りてくれた。


そんな私たちに続いてハオオッパやハンビンだけでなく、テレやマシューまで軽く跳ねて地面へと戻る。ジュンヒョンなんかは、2段目辺りから飛ぼうとしててスタッフさんに止められてた。そんな彼を見て、練習生みんなで声を出して笑い合う。


どうしても、ここでデビューできる人達は限られていて、いつか、この番組は必ず終わりを迎える。
それでも、決してここで得るものは無駄では無いのだと、もう既に予見している。
だって、何よりもこんなに素敵で大好きな仲間たちと出会えたのだから。


.



『シグナルソングのステージ、どうでしたか？』



『あー、上手くまとまらないと思うんですけど。多幸感と、少しの寂しさ、そして溢れる喜び…すいません、意味わからないですよね』


くつくつと笑うと、スタッフさん…オンニは続けてください、と言ってくださる。



『あんな眩くて、儚いステージに立てたことが、本当に幸せで、嬉しくて。でも、物事には終わりがあるじゃないですか。この番組も、いつか必ず終わってしまうのだと思うと、既に寂しくて』


『時が過ぎるのはあっという間だって、昨日改めて感じて…だからこそ、1分1秒を未来の自分に、応援してくださる皆さんに捧げたいと強く思います』

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