69 ページ19
「俺、中学ん時は学ランやけど、高校行ってへんからさ。ちゃんとした制服着んの超久々」
まさかこういう機会で着るとは思わへんかったけど。そう言って眉を下げて綻んだ顔を見せる。佳汰は中学校の時は毎週末東京に行って、高校生になる年からは上京して練習生生活を行っていたから、高校に通っていないのだと。多少状況は変われど、私たちはよく似ているのかもしれない。
それにしても、と私の顔をじっと見る佳汰。話す機会は多くあれど、こんなに見つめられることは無かったので少し気恥しい。そんな佳汰は急に破顔したかと思えば、私のほっぺをむにっとつかんできた。
「Aって腹立つくらい顔整っとるよな」
「なんでちょっと悪くいうの」
日本語で褒められる機会なんてここではそんなに無いから嬉しい、てかどこか照れくさいのに、形容詞のせいで台無しだ。佳汰だって、私からしてみれば顔整ってるのに。くりくりのおめめとか、緩やかに上がる口角とか、笑った時に大きいお口とか。
「ごめんごめん、Aが可愛いからさ」
「褒めとけばいいって思ってるでしょ」
「ちゃうって！...ほんまに、可愛いし綺麗」
頬から手を離され、ゆっくりと頭を撫でられる。佳汰はこうしてよく人の頭を撫でる。私も例外ではなく彼のごつごつとした男らしい手で髪をぐちゃぐちゃにされるのだ。いつもなら多分わしゃわしゃとされていたけれど、今日の佳汰の手つきはまるで壊れ物を触るかのように優しさがあふれでていた。
「Aとどっかで出会ってたりすれ違ったりしてたら、絶対忘れれんやろなってくらい。あー、日本のどっかで先に出会えてたら良かったのに」
そしたら今よりももっと仲良かったのに、なんてぼやく佳汰だけれど、私個人としては1番仲良いというか、話しやすくて、自分がもしつらくなった時にそばにいて欲しいと思える人は佳汰だから、今以上仲良くなっちゃうと困っちゃうかも、なんて。
「私は佳汰ととっても仲良いと思ってるけど、私だけ？」
そう少し意地悪く聞いてみると、その聞き方ずるいやん、なんて笑うから私も釣られて笑みが零れる。息はとっくに整ったし、十分なくらいに着ることができたセーラーも返さないとだから2人で部屋を出る。
「この格好で隣に並んでると学校帰りみたいやな」
制服に身を包む私と、スウェットの佳汰。文化部と運動部の帰路みたいで、こうして私たちが日本で何気ないひとときを過ごす世界線もどこかにあったのかな、なんて。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1457人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
RUNA(プロフ) - いえいえ教えてくれてありがとうございます! (2023年4月4日 15時) (
レス) id: 391b329446 (このIDを非表示/違反報告)
りあ(プロフ) - RUNAさん» コメントありがとうございます。こちらの作品ではチャギはパクハのことになっております。分かりづらかったりミスしていましたら申し訳ございません。 (2023年4月3日 21時) (レス) id: 103a13316a (このIDを非表示/違反報告)
RUNA(プロフ) - チャギってパクハでしたっけ? (2023年4月3日 13時) (レス) @page34 id: 391b329446 (このIDを非表示/違反報告)
りあ(プロフ) - 鈴木さん» コメントありがとうございます〜！そう言っていただけると嬉しいです(；；)これからもゆっくりと書いて行きますのでのんびりとお待ちいただけますと幸いです！ (2023年3月30日 6時) (レス) id: 103a13316a (このIDを非表示/違反報告)
鈴木(プロフ) - クムとパクハが大好きすぎて頭抱えてます大好きです(;_;) チャギ呼びもクムの騒がしい感じも最高ですこれからも応援してます！！！ (2023年3月27日 22時) (レス) id: 3e062d6061 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：りあ | 作成日時：2023年3月17日 22時
