淡い恋が芽吹いた日 / ちゃげぽよ。 @7 ページ4
淡い恋が芽吹いた日 / ちゃげぽよ。
からん、と何度目か分からない鈴の音が鳴る。それと共にいらっしゃいませ、と同僚の声がこの静かな空間に響いた。
そろそろ場所も埋まってきたので、急いで空いた席を片付ける。テーブルを拭いていると、同僚が周囲の目を気にしながら駆け寄ってきた。
「A、今日も来てるよ」
「…えっ?」
ほら、あの席。
同僚が指で示した場所は、陽当たりが良く、あまり空席になるのを見掛けない席。
そこに居座る彼は、二日か三日に一回はこの店を訪れる常連さんで。何故か私は、彼に気に入られているようだった。
いつもコーヒーしか頼まず、暇していないのかと不安になる。
此処からは後ろ姿しか見られないので、場所を移動してこっそりと覗いて見ると、何だかとても面白そうな本を読んでいて。不思議と、私は彼に話し掛けていた。
「読書、好きなんですか?」
「あ…はい。店員さんも本を読まれたり…?」
「はい、私も良く読むんです」
名前を聞くと、ちゃげさん、と言うらしい。
ちゃげさんは、近くの大学に通っているそうで、その帰りに此処に寄ることが多いという。
大学のレポートや課題が終わらない時、気持ちが下がった時、友達と会話したい時。そんな場合に此処のカフェに寄ってくれるちゃげさん。
「…Aさんっ!」
「はい…?」
帰り際、ちゃげさんは入り口付近で立ち止まり、私の名前を呼んだ。
おもむろに鞄から携帯を取り出した彼は、一歩踏み出す。
「連絡先、聞いても良いですか!?」
そんな、淡い恋が芽吹いた日
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ちゃげさん!(初めてタイトル通りに書けた)
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