もすこみゅーる。【Daiki,A×Kei,I】 (ページ6)

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電車に揺られている間、俺は昨日のことを一生懸命思い出してみた。

だが幾度思い出しても、俺はあのバーでバーテンと話してる内に眠ってしまった、そこまでの記憶しかなくて。

店には確かに2.3人客はいたが、あんな男を見たり話したりした記憶は全くなかった。

しかもあいつ………

「全裸だったよな……？」

そう思わず声が出てしまい、慌てて口を抑える。

そう。布団は捲らなかったが、あいつは確かに上半身全裸だった。

＿＿＿＿え、ということはまさか俺、男と致した？？

そこまで考えて俺はブンブンと首を振った。

いやいやいや、そんなはずは無い。

俺は健全な男な訳だし？でも……

なんで俺は、自分の家まであいつを迎えてるんだ？

本当に記憶が無いのが恨めしい。

でも。こういう状況ってホテルとかなら分かりたくはないけど、分かるというか。

なんでよりにもよって家？

なんで＿＿＿＿＿＿

「あーりおかっ」

車内でバンッと俺の目の前にいきなり現れる男。

俺も考え事をしていたせいかその男が近づいてくるのに気づかなかったらしい。

「うわっ、って……なんだ、中島かあ」

「は？なんだよ〜中島かあって？！」

そんな大きな声で言うのは会社の同僚の中島裕翔だった。

中島はすぐに俺の隣の席にストンと座ると

「なんだよそんな辛気臭い顔して。なんかあった？」

「なんかあったっていうか……」

朝起きたら見知らぬ男が隣にいたんですなんて言えるはずがなくて。

「久々に悪い夢？を見ちゃったというか…」

「何だよそれ！いい年にもなって夢でテンション下がるとか有岡もまだまだ子供だなあ〜そんなの早く忘れな？」

中島はそう笑い、俺の背中を叩いた。

………そうか、忘れさえすればいいのか。

「なんか元気出せそうな気がするわ…」

「お、だろ？よかったよかった！同僚が元気ないと心配だしな〜…ってあ、もう着いたみたいだな」

中島はそんな事を言うとまたすぐに立ち上がった。

中島裕翔は言うまでもなく、持ち前の明るさと人当たりの良さで同僚一…いや、会社一の人気者と言っても過言ではなく。

「おはようございます、今日もよろしくお願いします〜」

なんて言って彼が会社を歩けば皆が笑顔になって。

ああきっと特別な人っていうのはこういう人のことを言うんだろうなと思うと腑に落ちる。

そしてやっぱり俺は彼の横にいる平凡な男でしかないのだといつも痛感するのである。