もすこみゅーる。【Daiki,A×Kei,I】 (ページ4)

今日:8 hit、昨日:2 hit、合計:8,826 hit

4. ページ4

最初は楽しい酒だった気もした。

ただ、今日のことを忘れるにはそれこそ嗜む程度の酒じゃ足りなくて。

もう一杯もう一杯なんて頼んでいるうちに

「へぇーーー君まだ23歳？若いねえ、まだまだ未来はたくさんあるねえ」

すっかり酔っ払いウザ客に早変わりしてしまった。

「お客さんも26歳なんですよね？そんなに変わらないじゃないですか」

「26…26なんだよなあ、もう」

俺は机に突っ伏した。

俺が何故こんなにも彼女にフラれた、たったそれだけでこんなに落ち込んでるのか。

そんな時ふと机に突っ伏した俺の目に入ったのはバーテンが胸につけていた名札。

「へえ、バーテン君、八乙女君っていうんだあ…変わった苗字だね」

「ああ、そうなんですよ。でも、珍しい苗字って悪目立ちするし案外不便なんですよね」

「ふうん…でもいいなあ、普通じゃなくて……」

そこまで口にして俺はテーブルの上のさっきまでモスコミュールの入っていた空のグラスに映る自分を見た。

【普通でつまらない】

彼女の残したその言葉は今思えば図星で。

グラスに映るこの自分が何か少しでも特別なことがあれば。

俺の未来は変わっていたのかもしれないと思うと、やるせなくて。

＿＿＿＿＿＿でも。

「普通じゃない俺って何なんだろうな………」

特段変わった苗字でもない。

今まで特別な経歴を持ち合わせている訳でもない。

珍しい職業に就いている訳でもない。

そんな俺に果たして彼女は何を求めていたのか＿＿＿＿

そんなこと皆目検討のつかない俺はそうしてそのままバーのテーブルで眠ってしまった。

＿＿＿＿＿＿＿ああ、確かにそうだった。