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紫耀先生の車に海人を乗せ、私も横に乗る。
途中で紫耀先生は
「必要なもん、あるやろ。」
と、ドラッグストアに寄ってくれ、買い物を済ませる間、海人を見ていてくれた。
家に着いて、海人や荷物を運びこむ間も、手伝ってくれた。
そうして帰り際、紫耀先生が海人に話しかけた。
平「海人、しっかり治せよ。元気になったらまた待ってるからな。」
海人の頭を撫でながら言うと、海人はうるうるした瞳で、
「紫耀先生が海人といてくれたら治るもん。」
先生は苦笑して
「そんな事言われたら帰れねぇな。」
と言い、海人と手を繋ぎ、海人が眠るまでベッドの傍らにいてくれた。
しばらくして、紫耀先生が海人の側から離れ、
「海人寝たので、俺は帰ります。」
と言った。
A「ありがとうございます。送っていただいただけでなく、海人のわがまままで聞いていただいてすみませんでした。」
平「いえ。」
短く言って、紫耀先生が私の方を向く。
向いたと同時に、私の手を紫耀先生の両手が包んだ。
驚いて言葉を失う。
私をじっと見ながら、紫耀先生は言った。
平「ねぇ、名前は?」
A「は…?」
平「呼ぶ時にさ、『海人君のお母さん』て、そればっかりなんだよ。」
「名前も知らないのにさ、何で俺、こんなに…」
紫耀先生は切なげに私を見る。
潤んだ瞳に吸い込まれそうだ。
震える声で、私は言った。
A「A…。」
平「え…?」
A「だから、私の名前。A…。」
紫耀先生は、私の両手を包んだまま、私の耳許に顔を寄せ、囁くような声で言った。
平「A…。俺の好きな名前だ…。」
ゆっくりと紫耀先生の体が離れる。
紫耀先生が帰っていく気配を感じながら
私はその場にへなへなと座り込んでしまった。
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きっちょむ(プロフ) - 碧さん» 碧さん、ありがとうございます!始めから岸君サブで、ちょこっとだけのつもりだったのが、予想外にいい子過ぎて一瞬岸君とハッピーエンドにしようかと思ったくらいです(笑)また応援よろしくお願いします!コメント嬉しいです♪ (2019年12月15日 23時) (レス) id: 1ef3c32ee2 (このIDを非表示/違反報告)
碧 - 良かったです!紫耀君カッコいいし、海ちゃん達は可愛いし…私、よく岸くんメインの小説読むんですけど、サブ?もいいなぁって思いました!おまけもホッコリして…ありがとうございました! (2019年12月15日 23時) (レス) id: 4ed223f98b (このIDを非表示/違反報告)
atu66mi67yu129(プロフ) - まってます。楽しみにしてます (2019年11月6日 22時) (レス) id: c65eb063a4 (このIDを非表示/違反報告)
きっちょむ(プロフ) - atu66mi67yu129さん、ありがとうございます!私も書いていて楽しかったので、そう言っていただけると嬉しいです★おまけ更新した時にちょっと続編書きたいなぁと思ったので、どっかのタイミングで書きたいと思います! (2019年11月6日 22時) (レス) id: 1ef3c32ee2 (このIDを非表示/違反報告)
atu66mi67yu129(プロフ) - 楽しい話だったので更新が待ち遠しかったです。ぜひとも続編お願いします。 (2019年11月6日 21時) (レス) id: c65eb063a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きっちょむ | 作成日時:2019年10月26日 16時