青く、光って【yuto.n】 (ページ4)

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A「龍我、あんなにスタスタ歩くなんて、あのメイクボックスそんなに軽かったのかなぁ」

大「ん？」

黙って一緒に衣装ケースを持って歩く大昇に話し掛けた。

やっと次の現場が見えたところだった。

A「もう手がしびれちゃったよ。龍我のと交換して歩いてくれば良かった」

大「…俺はこの方が良かったけどね…」

ぼそりと呟く大昇に、その先は聞けず、今度は私が固まる。

ーーーおーい、大昇ー！

現場から声が聞こえると、大昇は私の顔をのぞきこんで、デコピンした。

A「いたっ！！」

大「アハハ、でけー声。俺呼ばれたからもう行くよ。離すからちゃんと持てよ」

そう言いながら優しく衣装ケースを渡してくれる。

A「ありがと…」

大「衣装合わせあるから、A早く来いよ」

走り出した大昇はいつもの大昇だ。

こんな感じだから、時々大昇が苦手に感じる時がある。

いや、苦手とは違う…

そう、ドキッとしてしまうのだ。

まだ私が研究会に入ったばかりの頃、同じように衣装ケースを持って２人で歩いていた時

大昇が、不意に、本当に何でもないような感じで

「俺たち、付き合っちゃう？」

と言ったことがあった。

まだ本当に大昇とも仲良くなり始めの頃だったから

驚いた私は何も返せず、

「え、えーと…」

と言ったきりになってしまった。

その時大昇は薄く笑っただけで、その後は本当にいつも通りに冗談ばっかり言ってくるから

何でもなかったんだ、と私も思っている。

そんな事を思い出していたら

「お前ら本当に仲いいなぁ」

と、後ろから聞こえた。

振り向くと、そこにはやっぱり寄り添うように並んで立っている那須くんと遥香ちゃんがいて

私は
「…別にそんなんじゃない…」
と、口にするのが精一杯だった。

そんな私に気付く様子もなく、那須くんはひょい、と私が持っていた衣装ケースを持ち、

「先に行くぞー」
と、遥香ちゃんと歩き出す。

重い衣装ケースを持つ、那須くんの腕は細いけど意外に筋肉質で

こんな時なのに那須くんにドキドキしてしまう自分の気持ちを

もて余してしまった。