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映画1本分でも、演者やシーンが多ければ、その分衣装も増える。
パンパンに衣装が入ったケースを、やっとの思いで持ちながら、隣を歩く龍我に話し掛ける。
A「龍我…最初はこれ、衣装もメイクも龍我1人で担当の予定だったんでしょ…?」
龍我も両手に大きなメイクボックスを2つずつ持っている。
龍「ぜってームリだったなー笑 A来てくれて助かったわ」
そう大きな大学ではないのだけど、やっぱり撮影で色んなところを使うとなると、そのたびに移動しなきゃならなくて。
今も校内の端から端まで歩いてきたところだった。
A「誰か他に手伝ってくれそうな人いないの?あの時かなり色んな人に声掛けたんでしょ?」
龍「うーん…」
A「もう落としたい気持ちでいっぱいだよ、、、」
龍「わりいな、手伝ってやりたいんだけど、俺も重くてさ…」
「あっ、でも半分持ってやるよ」
そう言った龍我が、私の方に手を伸ばし、衣装ケースを半分持とうとしたところで
急にふっと軽くなった。
A「あっ、ありがと…」
軽くなった先を見ると、通りかかった大昇が持ってくれている。
A「あ、大昇か。」
大「手伝ってほしいならさ、言えばいいじゃん」
よく見ると、大昇は何だか不機嫌そうだ。
A「何怒ってんの?ありがとうって言ってるのに」
大「別に…」
私たちのやり取りを聞いていた龍我が吹き出す。
龍「だからさ、新しいメンバー増やせないんだよなぁ」
龍我の言葉に、大昇の口が尖る。
A「大昇、その顔かわいいよ笑」
大「ばっ…!」
口を尖らせたままそっぽを向いた大昇と
大昇が何でそんなに不機嫌なのか分からない私を
龍我は楽しそうに見比べた後
龍「俺、先に行くねー」
と、軽やかな足取りで、行ってしまった。
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作者名:きっちょむ | 作成日時:2024年1月9日 5時