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今まで華やかな場所とは縁がなかった。


好きなことはあったけど、特技なんてものはないし


大学もすごく勉強したい分野があったかというとそうではなくて
ちょっと興味があるなーくらいの気持ちで入学した。




そんな代わり映えのしない、入学式から3ヶ月後、

1人学食でコーヒーを飲みながら本を読んでいた私の前に
フワッと1枚のリーフレットが置かれた。


A「え?」


頭の上からのんびりした、でも明るい声が聞こえた。

「ねーねー、僕たちさー、映画作ろうと思うんだけど、見に来ないー?」



思わず顔を上げると、そこには小柄な男の子がいて、ふわりと笑っていた。


固まる私を見て、男の子はさらに続ける。

「僕、藤井。藤井でもナオキでも、ファッショナル藤井でもおしゃれ番長でも、何て呼んでもいいからねー。」

A「は、はぁ…」


「そんな呼び方で誰も呼ばねえだろうよ。笑」

そこへ更に誰かが会話に割って入ってきた。


藤「もー、大昇。いいのー」

藤井くんはまた優しく笑い、
「あ、この人たちねぇ、僕の仲間ー。」
と言った。


辺りを見回すと、藤井くんの周りにはキラキラの集団が…!


大昇、と呼ばれたその人は、場所分かる?ここに書いてあるからね、と、リーフレットを指さしながら説明する。

他の男の子たちも、口々に話し始めた。

金「映画、よく見るの?何が好きー?」
龍「俺ね!メイクとスタイリング担当するんだよ」
浮「ね、見においでよ!絶対楽しいよ!」


ニコニコと大きな声で好きなことを言ったかと思うと


大「そろそろ次も回ろうぜ」
藤「本当だー、もうこんな時間」
金「意外とあっという間だね」
浮「じゃーねー。待ってるよ!」

色々言いながら、風のように去って行った。




突然の誘い。私はそっとリーフレットを手に取り、じっと見つめた。



今までなら、絶対に行く選択をしなかった。

でも、気になってしょうがなかった。




たった1人だけ、喋らなかった男の子がいた。

それでも、その男の子が目に焼き付いて離れなかった。



なぜかその子の周りは、青く澄んで光っているように見えて
仕方がなかったからだ。



名前、聞かなかったな、と、後で気が付いた。

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作者名:きっちょむ | 作成日時:2024年1月9日 5時

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