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ーーカチンッ!
「はーい、オッケーでーす!」
現場にカチンコの音が響くと、そこは一気に現実になる。
※「さっきのせりふの間なんだけど…」
※「照明もう1回確認してー!」
※「汗拭く?メイクは?」
撮っている間の少しピリピリとした、緊迫感のある雰囲気も好きだけど、現実に戻った時の少し高揚したような空気感も好きだなぁ…
みんなの動きを眺めながら、目の前で汗を拭かれている大昇と浮所くんをぼんやりと見ていたら
大「何だよ、A」
浮「そんなに見つめちゃって、…あーっ!Aちゃん、僕のこと好きだったりするのー?」
からかわれてしまった。
大昇と浮所くんは、私が所属する映画研究会のツートップだ。
他にももちろん演者のメンバーはいるけど、この2人には敵わない。2人とも華があり、そこに立っているだけでつい目が向いてしまう。
A「え?!違う違う!変なこと言わないで!」
大「ムキになってるとこが怪しいけど、ワンチャン相手が俺って可能性もあるな」
「お前らバカなこと言ってないで、大人しくしてろよ。
メイクうまく直せなくて龍我困ってんだろ」
そう言って、笑いながら私の隣に立ったのは、脚本を担当している那須くんだ。
龍「そうだよ!今動かれたら変な線描いちゃうかも」
浮「そうなっても一番キラキラな自信あるから」
浮所くん、さすが…
那「浮所はすげー自信だよなぁ」
那須くんが笑いながら、私の方を向いて話し掛けた。
それに答えようと口を開きかけた所で
「Aちゃん、スタイリスト呼ばれてる。次のシーンの衣装のことでって。」
同じ研究会の演者メンバー、遥香ちゃんから声が掛かる。
A「うん。ありがとう、遥香ちゃん。」
呼ばれた場所へ急ぎながら、ちらっと私が今までいた方を見ると
那須くんの隣にぴったり寄り添うように立っている遥香ちゃんと
ほんのり頬に赤みがさしている那須くんが見えて
私はこっそりため息をついた。
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作者名:きっちょむ | 作成日時:2024年1月9日 5時