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その後行われた女子のレース。
プールサイドに向かう途中、雅ちゃんが私に気付き、
雅「あ、さっき飛貴と一緒にいた子だー」
と話しかけてきた。
A「あっ…どうも。」
何て返していいか分からず、何だかぶっきらぼうな返事になってしまった。
雅ちゃんはそんな私ににっこりと笑いかけ
雅「ね、Aちゃんだっけ?私、Aちゃんの泳ぎ見てたけど、すごくフォームキレイだね!」
A「えっ?あ、ありがとう…」
雅「お互い、頑張ろうね」
雅ちゃんて、きっとすごくいい子なんだろう。
勝手に嫉妬して、暗くなってる私の何倍も。
A「うん…」
やっとの事で曖昧に微笑むと、雅ちゃんも笑い返してくれた。
レーンは雅ちゃんと離れていたから、横を向かなければ目に入る事はない。
私は前を向いて集中し始めた。
このレースで優勝して、表彰台に上がりたい。
表彰台に上がって、浮所くんと話したい。
…よし!
ブザーと共に飛び込んだ水の中。
私は夢中で手足を動かした。
ザバッ!
ゴールにタッチして、急いでゴーグルを外し、ボードを見る。
私は自己新を更新していた。
A「やった……え…?」
更新はしていたけど、結果は2位だった。
優勝したのは、雅ちゃんだった。
その後の、男子のレースはよく覚えていない。
私は、表彰台に上がっている大昇と浮所くんをぼんやりと見ていたのだけは覚えている。
のろのろと、控え室で着替える。
髪の拭きが甘くて、少し制服に水滴が落ちるけど今はそんなところまで気が回らなかった。
余りにも時間が過ぎていたから、もう誰もいないだろう、と歩き始めたロビーに
たった一人、私を待っていてくれた人。
「Aちゃん…」
浮所くんはいつものように微笑みながら
ほんの少しだけ顔を赤くして私を呼んだ。
浮「俺さ…」
言い掛けた浮所くんの言葉を遮るように私は口を開く。
A「私は…2番なの…?」
浮「…え?」
戸惑う浮所くんの瞳を真っ直ぐ見て、私は言う。
“あの頃みたいに1番だよって言って”
雅ちゃんの声がこだまする。
A「私はやっぱり、1番にはなれないのかな…?」
浮「…Aちゃん…?」
私に1歩近付いて、手を差しのべようとしてくれた浮所くんを
私はすっと避けてそのまま走って、その場を離れてしまった。
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きっちょむ(プロフ) - おれんじ がーるさん» ありがとうございます!!やっと完結です。。。またどこかのタイミングで番外編など書けたらなーと思ってます♪ (2020年8月15日 16時) (レス) id: 1ef3c32ee2 (このIDを非表示/違反報告)
おれんじ がーる(プロフ) - わーーー!!!!完結おめでとうございます(^_^)私こそ読むのがとても楽しかったです♪ (2020年8月15日 16時) (レス) id: 10e6bf4b2e (このIDを非表示/違反報告)
きっちょむ(プロフ) - おれんじ がーるさん» ありがとうございます!ちょっと今回は切なくなってしまいました。。。ぜひ浮所くんの応援よろしくお願いします♪ (2020年8月2日 21時) (レス) id: 1ef3c32ee2 (このIDを非表示/違反報告)
おれんじ がーる(プロフ) - うわぁ…(泣)今回はとても切ないですね… (2020年8月2日 21時) (レス) id: 10e6bf4b2e (このIDを非表示/違反報告)
おれんじ がーる(プロフ) - 読ませて頂きました!! もどかしいですね^o^ いつもお疲れ様です!♪ (2020年7月26日 10時) (レス) id: 10e6bf4b2e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きっちょむ | 作成日時:2020年5月30日 16時