Over-flow【hidaka.u】

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浮所くんのおまじないは、びっくりするくらいよく効いた。









だって、家に帰ってから


並んで私の帰りを待っていたお姉ちゃんと優くんに笑顔で返事ができたくらい。






今まではこんな風に、二人を目の前にして笑うのは、はっきり言ってしんどかった。









…すごいな、浮所くんて。









不意に







さっきの浮所くんの、困ったような顔を思い出して



キュンとなった。









一つ思い出すと、次から次へと思い出す。









浮所くんの笑った顔。



「Aちゃん」て私を呼ぶ声のトーン。



いつの間にか大好きになっていた、浮所くんの甘い匂い。



「一番好きな香り」って言ってくれたあの言葉。









全部キラキラ輝いているように感じられて




何だかまた浮所くんに会いたくなってしまった。









ずっとずっと優くんだけを好きだと思っていた。



でも








そんな私の心を、浮所くんはひっくり返した。









いつからだろう。






浮所くんに「Aちゃん」て呼ばれるたびに


キュンとするようになったのは。









泳ぐ時に真っ直ぐ前を見つめるその目力に


ドキドキが止まらなくなったのは。









浮所くん。





その名前を口の中で繰り返すと、甘酸っぱい気持ちが湧き上がるのを感じる。








まるで私が浮所くんの事を好き、みたいだ。









目を閉じて考える。






次の試合、絶対頑張ろう。









頑張って、『1番』になれたその時に





私の今感じている気持ちを









ありのまま素直に伝えられたらいいな。

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