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猪「これってどういう…」
蒼弥が呟く。
私も何も言えないまま、ただ立ちすくむだけだ。
橋本さんが静かに口を開く。
橋「Aさんも社長も、あ、社長は蒼弥さんです。」
「社長はまだ若いし、家を出てしまった経緯がありまして」
「心配した会長、蒼弥さんのお父様ですね。会長が『相手の方は、蒼弥についていけそうなしっかりした方かどうか確認しなさい』と、私に命が下りました。」
私も蒼弥も、声も出ず、ただ顔を見合せるだけ。
蒼弥が社長…。
私の、婚約者…。
橋「初めてお会いしたAさんは、人のよいお嬢様という感じで、社長に泣かされてしまうかもしれないと、心配しましたが」
「今日お会いしたAさんは、しっかりとした顔付きをされていて」
橋本さんが微笑む。
橋「きっとこの間に、人生が変わるような素敵な出会いがあったのでしょうね…」
静かに橋本さんが退出した後も、しばらく私達は動けないでいた。
口火を切ったのは、蒼弥だった。
猪「び…びっくりしたわー」
「A、知ってたんなら言えよー！」
A「蒼弥こそ、ウソ…！社長だなんて！」
猪「ウソじゃねーよ、『自営業』つったろ？(笑)」
A「こんな大きな企業、『自営業』ってレベルじゃないじゃん…！」
蒼弥の、前みたいな軽い口調に思わず顔を見ると
やっぱり前みたいに私を見て微笑んでいてくれるから
私は堪えきれずに蒼弥に飛び付いた。
A「蒼弥！会いたかった…！」
「すごくすごく会いたくて、辛かったんだよ…！」
涙が溢れる。
蒼弥は私の頬を撫でながら
猪「ごめん」
と一言だけ口にする。
それから、全ての想いを私に余すことなく伝えるように
私をきつく抱きしめ、優しいキスをくれた。
猪「Aが…俺の婚約者だなんてな…」
蒼弥が呟く。
私は俄に不安になって
A「…私で本当にいいの…？」
と聞くと、蒼弥はにっと笑って
猪「だから、俺、ちゃんと言ったろ？」
「俺はお前がいいんだよ」
A「蒼弥！」
尚も蒼弥に抱き付く私に、蒼弥は笑いながら言った。
猪「さ、明日から忙しくなるぜ」
「結納でも式でも、俺がお前を」
「その場で一番輝かせてやるよ」
自信たっぷりに、笑いながら言った。
蒼弥のその笑顔に、私はやっと春を見付けたような気がした。
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きっちょむ(プロフ) - めろんぱんさん» めろんぱんさん、いつも励ましのコメント、ありがとうございます！本当に嬉しいです♪次も楽しんで書きながら、めろんぱんさんに楽しんでもらえる作品、考えますね！応援、ありがとうございました♪ (2020年5月19日 23時) (
レス) id: 1ef3c32ee2 (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱん(プロフ) - きっちょむさんの作品大好きなのでまた作品楽しみにしてます(^^) (2020年5月19日 23時) (レス) id: 3589a32c79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きっちょむ | 作成日時：2020年5月2日 12時
