★19 ページ47
橋「じゃあ、行こうか」
ニコニコと人のいい笑顔で、私をエスコートして
車に乗せてくれる橋本さん。
ドアを開け、持ったまま待ってくれるその仕草が、蒼弥を彷彿とさせ、私は俄に苦しくなる。
目を閉じていると、橋本さんが私に話し掛けて来た。
橋「少し遠いから、疲れたら寝ていてもいいよ」
「着いたら起こしてあげるからね」
A「うん…。大丈夫です」
橋「ははっ。そんなに緊張しないで。」
橋本さんは、変わらず本当にいい人だ。
今日久々に会った私を、婚約者としてきちんと大事に接してくれる。
今日は私の誕生日で、明日は結納の日。
私は橋本さんと一緒に、結納場所である、橋本さんのお家へ先に行く事になっていた。
両親と弟の龍斗は、結納の席で一緒になる予定だった。
本来なら、私の家で結納をするはずだったけど
「嫁ぐんだから少しでも慣れておいた方がいい」
という、両家の話し合いで決まったらしい。
私にとっては、もうそんなのどうでもいい事で
大事なのは、バッグに忍ばせている蒼弥からの手紙と
衣装ケースの中に入れて持ってきた、あのペパーミントグリーンのワンピースだけだ。
そんな事を思っていたら、私はいつの間にか寝てしまったみたいで
窓から入ってくる潮の匂いで、目が覚めた。
窓の外には、一面広がる海。
山に囲まれたところで育った私には、海面のキラキラが眩しく思えて
A「綺麗…」
思わずぽつりと呟くと、橋本さんはくすっと笑って
橋「綺麗でしょ？家まであと少しです」
と言った。
少し走ったあと、かなり大きな門をくぐり、車は停まった。
橋本さんがまた、ドアを開けて持って待っててくれたけど、私は震えて立つ事ができなかった。
私の見間違いでなければ、門扉の表札に書かれていた苗字は…。
橋「さ、こちらです。どうぞ」
橋本さんが支えてくれて、私は家の中に入った。
部屋の扉を開ける前に、橋本さんが神妙な顔付きで私に告げた。
橋「騙すような事をして、大変申し訳ございません」
「私は…Aさんの婚約者ではございません。」
「本当の婚約者は、こちらでございます」
ドアが開いたその先に立っていたのは、
私と同じように目を見開いた、蒼弥だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 87人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「HiHiJets」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きっちょむ(プロフ) - めろんぱんさん» めろんぱんさん、いつも励ましのコメント、ありがとうございます！本当に嬉しいです♪次も楽しんで書きながら、めろんぱんさんに楽しんでもらえる作品、考えますね！応援、ありがとうございました♪ (2020年5月19日 23時) (
レス) id: 1ef3c32ee2 (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱん(プロフ) - きっちょむさんの作品大好きなのでまた作品楽しみにしてます(^^) (2020年5月19日 23時) (レス) id: 3589a32c79 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：きっちょむ | 作成日時：2020年5月2日 12時
