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蒼弥が私の髪を撫でる。
猪「…今日俺、めちゃくちゃ自信あったんだけどな…」
二人でシーツにくるまりながら、ぽつりと言う蒼弥に、私は聞いた。
A「ね、何でそこまで優勝したかったの？」
そう聞く私に呆れた顔で蒼弥は言う。
猪「そりゃ、コンテスト出るからには認められたいじゃん？自分の技術をさ。」
「今の店に入って、必死で技術盗んで、講習会行って試験受けてさ。とにかくスタイリストになるまで必死だったんだよ」
A「うん。」
猪「他の人より早くスタイリストになれたから今回で優勝して、見返してやりたかった。認めてももらいたかった。」
A「誰に？オーナーさん？」
猪「…親に」
A「えっ？お父さん？」
猪「ん…。元々さ、美容師になるのは反対されてたの、俺。でもとにかくやってやるわって家を出て。」
「今回優勝したら、堂々と親父の前で、一生これで食ってくからって宣言しようかと思ってた。」
A「まだチャンスはあるでしょ？次は出ないの？」
蒼弥が私をじっと見る。
猪「…お前、いねえかもしれないじゃん」
A「え…？」
猪「お前がペアじゃないとやる気になんない」
「でもA、本当に大学生なのか…？」
今しかない、本当の事を伝えるのは。
俄に鼓動が速まる。
A「あの…蒼弥…聞いて欲しい…」
「本当にごめんなさい…」
そう言って俯く私を不思議そうに蒼弥が見る。
全て話した。
大学生じゃない事。
期限がある事。
…婚約者がいる事。
話し進めていくうちに、どんどん蒼弥の顔が険しくなっていく。
私は蒼弥の顔を見る事ができなかった。
下を向きながら何とか話し終えた。
話し終えても蒼弥は何も言わない。
ただ空気だけがピリピリ感じた。
蒼弥への本気の気持ちも伝えたつもり。
黙ったままの蒼弥に、何か言おうと口を開いた時
蒼弥が立ち上がった。
そのまま、私を見下ろす。
その目は凍えそうな程冷たくて、私は何も言えなくなってしまった。
黙ったまま、蒼弥は身支度をして、出ていこうとする。
A「…待って！蒼弥！」
声を掛けた私をちょっとだけ見て、
一言だけ告げた。
猪「俺…ウソは嫌なんだよ…」
険しいけど、悲しい顔をしたまま、蒼弥は出て行った。
そのまま朝になっても帰って来なかった。
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きっちょむ(プロフ) - めろんぱんさん» めろんぱんさん、いつも励ましのコメント、ありがとうございます！本当に嬉しいです♪次も楽しんで書きながら、めろんぱんさんに楽しんでもらえる作品、考えますね！応援、ありがとうございました♪ (2020年5月19日 23時) (
レス) id: 1ef3c32ee2 (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱん(プロフ) - きっちょむさんの作品大好きなのでまた作品楽しみにしてます(^^) (2020年5月19日 23時) (レス) id: 3589a32c79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きっちょむ | 作成日時：2020年5月2日 12時
