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私の実家は、地方の旧家だ。
色んなところにたくさん土地を持っているらしく、一応不動産らしい家業をしているが
任せる事の方が多いらしく、父はあまり出社せず家にいた。
影響力もあったのだろうか、私の家には議員さんや色んな会社の偉い人たちがひっきりなしに訪れていた。
一応私にも『反抗期』みたいなのはあって
学校は普通の、公立に行きたいと主張すると
あっけなく両親は了解してくれた。
でも、誰かと付き合うとかそういう類いの事はダメだと固く約束させられていて、門限や外出にも厳しかったから
恋愛なんて考えた事もなかった。
だから、蒼弥の言った『箱入り』という表現は、あながち間違ってはいなかったのだ。
高校を卒業する直前、父に部屋に呼ばれた。
そこで初めて私は、自分に婚約者がいる事を知った。
父の仕事の関係者の息子さん。
断る術はない。
相手の年齢も考えて、私の20歳の誕生日に結納をし
3ヶ月後に、式をあげる事になっていた。
その20歳の誕生日まで、あと1ヶ月。
私は最後のお願いを父にした。
『最後に、一人で色んな経験をしてみたい』
『これからの人生、胸をはって生きられるように、何か形に残したいの』
父は、私の必死のお願いを聞き入れてくれた。
『これからAが嫁ぐ家系は、色んな業種に携わっているから、お前も色んな経験をしたい、というのはいい事だと思う』
両親共に、私や弟を可愛がってくれている。
箱入りだからと言っても別に私の話を何も聞いてくれないわけではない。
ただ、父が引いたレールから私が外れようとすると、全力で止められる。
だから私は本を読む事を、経験の代わりにするしかなかった。
だから本が好きだ。
色んな職業に就けて、色んな人種になれて
色んな経験ができる。
心から愛した人と、結ばれる事もできる。
私の婚約者は、『橋本さん』といって
見た目は多少チャラくて、夜のお仕事をしていそうな感じだけど
言葉遣いは丁寧で、レディファーストで私を大事にしてくれる人だ。
でも、それだけ。
そこには
『相手の全てがほしい』と思うような激しい感情はない。
私が秘かに蒼弥に抱いているような想いもない。
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きっちょむ(プロフ) - めろんぱんさん» めろんぱんさん、いつも励ましのコメント、ありがとうございます！本当に嬉しいです♪次も楽しんで書きながら、めろんぱんさんに楽しんでもらえる作品、考えますね！応援、ありがとうございました♪ (2020年5月19日 23時) (
レス) id: 1ef3c32ee2 (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱん(プロフ) - きっちょむさんの作品大好きなのでまた作品楽しみにしてます(^^) (2020年5月19日 23時) (レス) id: 3589a32c79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きっちょむ | 作成日時：2020年5月2日 12時
