★9 ページ37
次の日、私はいつもの約束よりも早い時間、営業中に蒼弥のお店に行ってみた。
…あれからどうなったのかは分からないけど、今日また麗華ちゃんと鉢合わせたら気まずいな、と思ったから。
行ってみると蒼弥はお店に立っていて、お客さんの髪を切っていた。
いつもはお店のフロントライトも点いてないし、お客さんもいないから何か変な感じがした。
そのまま外から、蒼弥が髪を切るのを眺める。
私の髪を触るときは鏡越しに見るけど、こんな風に外から見るのは初めてで、
何というか…私は目を奪われてしまった。
真剣な表情でハサミを入れる。
かと思えば急に笑顔になって、お客さんと談笑する。
くるくると表情が変わる蒼弥。
服装は今時だけど、姿勢は謙虚で
私と話す時はそれなりだけど、お客さんと話す時は丁寧な言葉遣いで。
本当に真剣に仕事をしているように感じて
蒼弥が眩しく見える。
…自分が恥ずかしくなった。
私には、はっきり言って『自分』というものや
『やりたい事』『夢』さえもない。
ぼーっと外に立っていたら、お客さんを見送って外に出てきた蒼弥が私を見付けて
「A！」
声を掛けてきた。
A「あ…蒼弥…」
猪「何？早いじゃん」
A「うん…。ごめんね、まだお客さんいるのに」
私がそう言うと、蒼弥は笑って
猪「気にすんなよ。もう1件予約入ってるからちょっとスタッフルームで待ってて」
A「でも…私スタッフじゃないのに、悪いよ」
蒼弥は私の言葉に呆れた顔をして
「お前さ、俺とペア組むんだからスタッフみたいなもんだろ」
と言う。
私は蒼弥について、お店に足を踏み入れた。
スタッフルームに私が入ろうとした時、蒼弥が私に聞く。
猪「Aさ、昨日の…麗華に言われた事気にしてる？」
A「え？いや、うん…」
何て答えたらいいだろうか。
猪「昨日も言ったけど、気にすんな。俺はお前とコンテストに出たいんだから」
A「でも…彼女ならやっぱり気になるのかもしれないよね」
蒼弥はしばらく何も言わずにそのまま立っていたけど、ぽつりと
「…彼女じゃねえよ」
それだけ言って、お店に戻って行った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 87人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「HiHiJets」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きっちょむ(プロフ) - めろんぱんさん» めろんぱんさん、いつも励ましのコメント、ありがとうございます！本当に嬉しいです♪次も楽しんで書きながら、めろんぱんさんに楽しんでもらえる作品、考えますね！応援、ありがとうございました♪ (2020年5月19日 23時) (
レス) id: 1ef3c32ee2 (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱん(プロフ) - きっちょむさんの作品大好きなのでまた作品楽しみにしてます(^^) (2020年5月19日 23時) (レス) id: 3589a32c79 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：きっちょむ | 作成日時：2020年5月2日 12時
