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結局、あの時から『始まった』と考えていたのは私だけで
そもそも、一世は私と恋を始めるつもりはなかったのかもしれない。
今まで、聞きたい気持ちはあったけど
そのたびに元カレの言葉が頭を回って
口に出す事が怖かった。
いつの間にか目を閉じていた私は、先生が指揮棒で譜面台を叩く音に、目を開けた。
※「あとはそれぞれパートでさらっといて」
そう言って先生は帰っていく。
一世は相変わらずあどけない笑顔で、パートの人たちとじゃれ合っていた。
…あれで、二人きりになるとかなり積極的で
いつも私は一世の色気にやられてしまうんだから
一世は本当に『小悪魔』という表現がぴったりだ。
ぼんやりする私に、同じパートのパートリーダーである大昇が、静かに声を掛けてきた。
大「A、うちのパートちょっと休憩してから始めるから15分後に教室42に来て」
A「…うん。分かった」
大「大丈夫か？俺で良かったら話聞くよ？」
大昇の言葉に、私は笑顔で答える。
A「大丈夫だよー。教室42ね。行くから。」
大「本当に我慢しないで言えよ。心配してんだよ」
「…俺も、龍我も。」
A「…うん。ありがと…」
大「じゃあ俺、先に行ってるから」
大昇が先にホールから出ると、ちょうど目が合った一世が手を振ってきたから
私も微笑んで振り返す。
こういうやり取りって、『恋人』というよりは
『姉と弟』に近い気がするんだよな…。
そう思いながらホールの出入口を横切ろうとすると
ちょうどステージ脇で楽器の手入れをする龍我に出くわした。
背が高い龍我によく似合う弦バス。
龍我は弓をケースに入れながら、私に話しかける。
龍「なー、A。その辺に俺の松ヤニない？」
A「えっ？うーん、なさそうだよ」
龍「…あっ！さっきパーカスの子に貸したんだった」
アハハ、といつもの調子で笑ってくれて、私は少しほっとした。
昨日の龍我は、ちょっといつもと違った感じがして、ドキドキしちゃったから。
A「私今から休憩だから、楽器置きがてら取りに行ったげるよ」
龍「悪い、ありがと」
私はホールを後にした。
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きっちょむ(プロフ) - めろんぱんさん» めろんぱんさん、いつも励ましのコメント、ありがとうございます！本当に嬉しいです♪次も楽しんで書きながら、めろんぱんさんに楽しんでもらえる作品、考えますね！応援、ありがとうございました♪ (2020年5月19日 23時) (
レス) id: 1ef3c32ee2 (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱん(プロフ) - きっちょむさんの作品大好きなのでまた作品楽しみにしてます(^^) (2020年5月19日 23時) (レス) id: 3589a32c79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きっちょむ | 作成日時：2020年5月2日 12時
