♪5 ページ20
今日はオケ部の全体練習の日だ。
始めに合奏をして、そのあと指摘されたところをパート練することになった。
自分の位置から、演奏する一世を見る。
一世のボウイングは、一言で言うと『優雅』だ。
弦の上を弓が滑らかに滑っていく。
それを見ながら、私は付き合った当時の事を思い出していた。
あれは、新入生歓迎会の夜だった。
一次会でほとんど話した事がなかったのに
なぜか二次会で、一世はずっと私の隣にいた。
一次会ですでにみんなにかなり飲まされてしまっていたのだろう。
呂律も回らず１人で立つことも難しいくらいフラフラしていた一世は
それでも『電車で１人で帰る！』と言って聞かなかった。
私はそんな一世の様子にハラハラして
A「ね、金指くん本当に大丈夫？」
そう聞くと、一世は
ほぼ初対面である私の洋服の裾をちょっとだけつまんで
金「大丈夫じゃないかもしれないです。でも」
「A先輩が一緒にいてくれたら、大丈夫になるかも。」
「…だから、先輩の家に行っていいですか？」
そんな風に言った。
ほぼ『はじめまして』な後輩の、気紛れな一言を
私はあの時、なぜ真に受けたんだろう。
いつもは龍我や大昇でさえ、家に入れる事はなかったのに
私はあの時
「いいよ、おいでよ」
なんて、なぜすぐに返事をしたのだろう。
もしかしたらもうすでに私はあの時
一世に恋に落ちていたのかもしれない。
私の家に来た一世は、もうほぼ、いつもの一世に戻っていた。
A「金指くん…酔ってたんじゃなかった…？」
私が出したお茶を、ゴクゴクと飲みながら
金「酔ってますよ、もちろん」
と、しれっといつもの調子で言う。
A「でも、いつもと変わらないじゃん」
「…さっきまで歩けなかったのに」
そう言った私の頬に、一世は触れた。
金「…こうでもしなかったら僕は、先輩に相手にされなかった」
「……触れたかったんだ、こうして…」
そう言って微笑む小悪魔のような一世に
私はハートを掴まれてしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 87人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「HiHiJets」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きっちょむ(プロフ) - めろんぱんさん» めろんぱんさん、いつも励ましのコメント、ありがとうございます！本当に嬉しいです♪次も楽しんで書きながら、めろんぱんさんに楽しんでもらえる作品、考えますね！応援、ありがとうございました♪ (2020年5月19日 23時) (
レス) id: 1ef3c32ee2 (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱん(プロフ) - きっちょむさんの作品大好きなのでまた作品楽しみにしてます(^^) (2020年5月19日 23時) (レス) id: 3589a32c79 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：きっちょむ | 作成日時：2020年5月2日 12時
