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今年ももうすぐ終わってしまう。


こうして冬になると、
温かい料理の登場シーンが増えてくるから
調理時間にはかなり気を使うのだ。


今日の現場では、湯気が立った状態のビーフシチューを無事に提供できた。


けれど、特に感想は頂けなかった。


こういう時、よしくんだったら「おいしかった」って言ってくれるのになぁ、
なんて心の中で思ってしまう私は贅沢だ。


後片付けをしながら、笑みが零れそうになるのを必死でこらえる。


だって、今日は家に帰ればもう彼がいるんだもん。



「ただいまでーす」


玄関の扉を開けると、


「おっかえり〜!!!」


と言ってよしくんが私に抱きついた。

キッチンの方から、そして彼のエプロンからは、
空腹を刺激するスパイシーな香りが漂っている。


「もしかして、今日はカレー?」


「うん!自分で言うのもなんだけど、すげぇ美味いの作れちゃった」


「嬉しいです。すっごく楽しみ」


彼はそっと身体を離して、


「A」


と改めて私の名前を呼んだ。



「ん?」



「先にご飯にする?お風呂にする?それとも――井ノ原にする?」


手で自分を指すポーズで固まって、
ジョークで私を笑わせようとしてくれる。


「なに新婚の奥さんみたいなこと言ってるんですか(笑)」


そんな彼と過ごすうち、こうしてちょっぴりツッコミスキルが上がった。



「えへ〜言ってみたかったの!」



「……それ、井ノ原にする!って答えたら、どうなりますか?」



「試してみる?」



そんなふうに言う彼は、ジョークの域を超えて真の色気が出てしまってる。

うっかり「井ノ原にする」と言い出してしまいそうだけど、空腹に耐えかねた私のお腹がぐ〜っと派手に鳴ってしまった。



「ふふ、ごめんなさい……お腹が返事しちゃった」


「アハハ。もう可愛いなぁ」


「ひゃー恥ずかしい……」


赤面する私の肩を揉みながら、


「ままま、こちらへどうぞ」


と椅子をひいて座らせてくれた。



「井ノ原はデザートになるよ」


「えっと……楽しみにしております」


真面目な答えに、彼は「アハハ」と笑った。


これ以上の幸せを望んだら、なにか悪いことが起こってしまいそう。


恐ろしい程に、お腹も心もいっぱいだった。

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設定タグ:V6 , 20thCentury,トニセン , 井ノ原快彦   
作品ジャンル:恋愛
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ヨ-リン(プロフ) - 櫂さん» 櫂さん、こちらもお楽しみいただけて幸いです。本当にありがとうございます。いつでも遊びにきてください! (2022年8月12日 7時) (レス) id: 3d151d95ac (このIDを非表示/違反報告)
- こちらの作品も読ませていただきました……本当に素敵な作品です。幸せな空間がすぐ想像出来るので、また読みにきたいと思います。完結までお疲れ様でした! (2022年8月6日 23時) (レス) id: 4f295eac92 (このIDを非表示/違反報告)
ヨ-リン(プロフ) - ひささん» ひささん、ありがとうございます!ぜひともよろしくお願いしますm(_ _)m (2021年10月19日 0時) (レス) id: 3d151d95ac (このIDを非表示/違反報告)
ひさ(プロフ) - 新しいお話、楽しみにしてます! (2021年10月18日 5時) (レス) @page44 id: d7d462c614 (このIDを非表示/違反報告)
ヨ-リン(プロフ) - ひささん» ひささん、いつもありがとうございます。そうですよね……やはり寂しさが募りますよね。私の物語がそのようにお役に立てていること、大変恐縮です……!本当に嬉しいです。完結までお付き合い頂けると幸いです。 (2021年10月5日 1時) (レス) id: 3d151d95ac (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ヨーリン | 作成日時:2021年9月19日 1時

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