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「とりあえず乗っちゃって〜！」
促されておずおずと乗り込む。井ノ原さんも私も夕食をとっていなかったので、彼がよく行くというお店に連れてきてもらった。
静かで落ち着いた個室スペースは、初めて来た場所なのになぜか懐かしい心地。
「先日はありがとうございました」
井ノ原さんは、受け取ったハンカチと私を交互に見ながら
「クリーニング出してくれたの！？わざわざありがとうね」と言ってニコニコしていた。
「それと、心ばかりですが良ければ……」
悩んで選んだお菓子を差し出すと、
「えー！？かわいい！もう倍になって返ってきちゃってるよ」
と言ってアハハハ！と豪快に笑う。
「それと……あの、」
「うん」
口ごもった私のことを、井ノ原さんはじっと見つめて優しく頷く。
「い、井ノ原さんのお気持ちなんですが」
私は恥ずかしくて思わず逸らしてしまった。
「すごく嬉しいです。でも、何度考えても飲み込めませんでした。これが例えば夢だったとしても信じ難いです」
「いや〜夢でもAちゃんに会えたらサイコーだな！」
また目を細めて、ハハハと楽しそうに笑った。
そして、少しの間が空いて、彼は真剣な顔になってこんなことを言う。
「Aちゃん、俺と付き合ってくれないかな」
「付き合う……それって交際という意味ですか……？」
「んふ、そうだよ。そうしたいなって俺は思ってる」
「私、恋人いない歴と年齢がイコールなんですよ。
容姿も要領も悪いし、色々な面で井ノ原さんにご迷惑をかけるのでは……」
「ごめん。あのさ、勘違いしちゃってもいい？」
イタズラがバレた子供のように、肩を竦めてイヒっと白い歯を見せて笑う。
「？」
彼は手に持ったお菓子に1度視線を落としてから、こう言った。
「Aちゃんって、俺に気があんのかなーって思ってるのね。
だって、俺が目の前にいない時に、俺のこと考えてくれたんでしょ？すげぇ嬉しいよ。これ恋だよ」
恋愛ごとに縁がなかった人生。
恋……その言葉を直に聞くと、こんなにむず痒くて照れくさいものなんだ。
顔がカァッと熱くなるのを感じた。
「恋って勘違いで成り立つしょ？」
「そうなのですか……？」
「まあその限りではないけど。でも、Aちゃんが、自分の気に入ってないところをいくら並べても、俺には全部可愛く思えるし、好きな気持ちが冷めることもないから」
そう言って笑う彼に対して、私のいつもの否定的な言葉は浮かんでこなかった。
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ﾖ-ﾘﾝ(プロフ) - 櫂さん» 櫂さん、こちらもお楽しみいただけて幸いです。本当にありがとうございます。いつでも遊びにきてください！ (2022年8月12日 7時) (
レス) id: 3d151d95ac (このIDを非表示/違反報告)
櫂 - こちらの作品も読ませていただきました……本当に素敵な作品です。幸せな空間がすぐ想像出来るので、また読みにきたいと思います。完結までお疲れ様でした！ (2022年8月6日 23時) (レス) id: 4f295eac92 (このIDを非表示/違反報告)
ﾖ-ﾘﾝ(プロフ) - ひささん» ひささん、ありがとうございます！ぜひともよろしくお願いしますm(_ _)m (2021年10月19日 0時) (レス) id: 3d151d95ac (このIDを非表示/違反報告)
ひさ(プロフ) - 新しいお話、楽しみにしてます！ (2021年10月18日 5時) (レス) @page44 id: d7d462c614 (このIDを非表示/違反報告)
ﾖ-ﾘﾝ(プロフ) - ひささん» ひささん、いつもありがとうございます。そうですよね……やはり寂しさが募りますよね。私の物語がそのようにお役に立てていること、大変恐縮です……！本当に嬉しいです。完結までお付き合い頂けると幸いです。 (2021年10月5日 1時) (レス) id: 3d151d95ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ﾖｰﾘﾝ | 作成日時：2021年9月19日 1時
