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私はその日、井ノ原さんから2つのものを持って帰ってしまった。
ひとつは彼からの気持ち。
もうひとつは、彼のハンカチである。
翌朝、近所のクリーニング店に開店と同時に行った。
ハンカチ1枚だけをクリーニングに出す客は珍しいのか、
店員さんから「これで全部ですか?」と聞かれて「はい」と答えると、「えっ」と言われてしまった。
ハンカチ一つをポイッと返すのもなんだかな、なんて考えて、何かお菓子とか……あ……やり過ぎかな……
色々考えながらも駅地下街の洋菓子店に足が向いていた。
「贈り物ですか?」
カウンターの前で固まっている私に、店員さんが問いかける。
「はい、ちょっとしたお礼に……」
「こちらの焼き菓子の詰め合わせが人気です。中身を変更することもできますよ。その方のお好きなお味ありますか?」
「んー、よくブラックコーヒーを飲んでます。好き嫌いはそんなに無い……はずです。いつも美味しいと言ってくださるので」
彼を思い浮かべながらぽつりぽつり話をする。
結局、無難な1番人気の焼き菓子セットを選んだのだけど、
店員さんからは何故か「がんばってくださいね!」と応援されてしまった。
そうだよね。
さっきの私、まるで想い人の話をしているみたいな雰囲気だった。
数日後、クリーニング店で、仕上がったハンカチを引き取り、
お借りしたものをお返ししたいのですが、お時間頂けますか?
と、彼にメッセージを送った。
仕事を終えてからスマホを確認すると、
井ノ原さんもちょうどお仕事が終わったタイミングだったらしい。
さらには、偶然にも、井ノ原さんと私は目と鼻の先の距離にいることが判明。
じゃあ今から迎えに行くね。そこで待ってて!
私の心の準備は整わないまま、井ノ原さんが自家用車で颯爽と現れた。
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ヨ-リン(プロフ) - 櫂さん» 櫂さん、こちらもお楽しみいただけて幸いです。本当にありがとうございます。いつでも遊びにきてください! (2022年8月12日 7時) (レス) id: 3d151d95ac (このIDを非表示/違反報告)
櫂 - こちらの作品も読ませていただきました……本当に素敵な作品です。幸せな空間がすぐ想像出来るので、また読みにきたいと思います。完結までお疲れ様でした! (2022年8月6日 23時) (レス) id: 4f295eac92 (このIDを非表示/違反報告)
ヨ-リン(プロフ) - ひささん» ひささん、ありがとうございます!ぜひともよろしくお願いしますm(_ _)m (2021年10月19日 0時) (レス) id: 3d151d95ac (このIDを非表示/違反報告)
ひさ(プロフ) - 新しいお話、楽しみにしてます! (2021年10月18日 5時) (レス) @page44 id: d7d462c614 (このIDを非表示/違反報告)
ヨ-リン(プロフ) - ひささん» ひささん、いつもありがとうございます。そうですよね……やはり寂しさが募りますよね。私の物語がそのようにお役に立てていること、大変恐縮です……!本当に嬉しいです。完結までお付き合い頂けると幸いです。 (2021年10月5日 1時) (レス) id: 3d151d95ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヨーリン | 作成日時:2021年9月19日 1時