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結局、そのシーンを取り直すことになったため、
その後の撮影が予定より何時間も押してしまった。
私が調理場で片付けに取り掛かった時には、とっくに深夜0時を回っていた。
「Aちゃん」
ぴょこっと顔を覗かせてくれたのは、井ノ原さん。
こんな時間にも変わらない笑顔だった。
「井ノ原さん、お疲れ様です。
本日は私のせいで申し訳ありませんでした」
「ううん。ごめんね。言葉もキツかったよね」
あの時、井ノ原さんはちょうど雑誌の取材で別室にいたらしい。
そしてその後、スタッフさんから事情を聞いて
全てを把握していたようだった。
「井ノ原さん謝らないでください。全て私の力量不足のせいです」
「いや……そんなことないんだよ。100人いたら100通り答えが出ちゃうものでしょ？」
まさに彼の言う通りだと思う。
でも、この言葉に頷いてしまうのは、甘えなのではないか……
そう思うと、彼をじっと見上げることしかできなかった。
「Aちゃんのが、たまたま彼女の答えと遠かっただけで……何もそんな言い方しなくてもなぁ」
「いえ、そんな……」
「俺はAちゃんのが好きだよ」
それがトドメのひと言だった。
私を認めてくれる人がいてくれたんだ……
私の涙腺は刺激され、
井ノ原さんの柔らかな表情がみるみる滲んでいく。
「っ……ごめんなさい」
これ以上涙が零れないように天井を見た。
無機質な蛍光灯がチカチカしている。
突然、視界が暗くなった。
自分の身に何が起こったか、分からなかった。
「大丈夫、大丈夫」
という言葉と共に、優しい温もりが身体全体に伝わってきた。
井ノ原さんに抱きしめられている……
しかも、頬に伝う涙を、彼がハンカチで拭いてくれているらしい。
状況を把握した瞬間、
「すみません、ダメです。汚れてしまいますよ」
咄嗟にその手を止めようとした。
けれど、
「いいんだよ。それがこいつの役目なんだから」
そう言って笑って、ぽんぽんと優しく頬にハンカチを当てた。
薄化粧とはいえ、ファンデーションやアイラインも付いてしまう。
「私なんかに使うことが問題なんです」
「私"なんか"って言わないで」
ぎゅっと力を込めてキツく抱きしめてくれた。
まるで私の全てを受け入れてくれるかのように。
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ﾖ-ﾘﾝ(プロフ) - 櫂さん» 櫂さん、こちらもお楽しみいただけて幸いです。本当にありがとうございます。いつでも遊びにきてください！ (2022年8月12日 7時) (
レス) id: 3d151d95ac (このIDを非表示/違反報告)
櫂 - こちらの作品も読ませていただきました……本当に素敵な作品です。幸せな空間がすぐ想像出来るので、また読みにきたいと思います。完結までお疲れ様でした！ (2022年8月6日 23時) (レス) id: 4f295eac92 (このIDを非表示/違反報告)
ﾖ-ﾘﾝ(プロフ) - ひささん» ひささん、ありがとうございます！ぜひともよろしくお願いしますm(_ _)m (2021年10月19日 0時) (レス) id: 3d151d95ac (このIDを非表示/違反報告)
ひさ(プロフ) - 新しいお話、楽しみにしてます！ (2021年10月18日 5時) (レス) @page44 id: d7d462c614 (このIDを非表示/違反報告)
ﾖ-ﾘﾝ(プロフ) - ひささん» ひささん、いつもありがとうございます。そうですよね……やはり寂しさが募りますよね。私の物語がそのようにお役に立てていること、大変恐縮です……！本当に嬉しいです。完結までお付き合い頂けると幸いです。 (2021年10月5日 1時) (レス) id: 3d151d95ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ﾖｰﾘﾝ | 作成日時：2021年9月19日 1時
