26話 返品不可なのでご注意を ページ39
「大分…様にはなってきたけど…アレはなぁ…」
四ツ葉が呆れた紛れ呟く。坊っちゃんはリードの椅子に座りながら ヤレヤレ…と溜め息を付き、リリイさんは困った様に笑う。
……私だって好きで“こんな物”を振り回している訳じゃないんだ、畜生。
…四ツ葉にリードを貰った次の日、私は坊っちゃんとリリイさんに有栖院の屋敷に招かれ、使い方を教わっていた。
家では出し入れまでは出来るようになった。
だが…問題は“その物”である。
現在…午後9時前。どうにか攻撃の“電気ショック”を出せる様になると、リリイさんが拍手をしてくれた。
「飲み込みが早いですねぇ、Aさん。
…その…“スタンガン”…。い…いやー、この書店で見つけた
『自分の身は自分で守る！ スタンガン使い方・実用マニュアル〜過剰防衛？ 結構です！〜』
この本…役に立てて良かったですー…」
「言ってやるなよ兄さん。過剰防衛系女子になる って気にしてるんだから。落ち込むだろ」
「もう遅いわ吸血鬼共！ 見ろ、Aは既に落ち込んでいるぞ！！」
部屋の隅っこで体操座りで顔を俯かせる。
…過剰防衛系女子になってしまった…。
其処の吸血鬼2人、一端ビリビリさせたろか。
昨日目を開けると、私の手には黒い光りを轟かせながら出現したのは…ハンディータイプの“スタンガン”…。
四ツ葉に「チェンジ…！」と懇願したが「返品は取り扱っておりません」と言い放たれた。
…此じゃこの前四ツ葉に持つように渡された唐辛子スプレーより過剰だよ…。
「リードまで過保護か…。
四ツ葉が過保護なのと何か関係有るんじゃないか？」
「…御言葉ですが坊っちゃん。そうなると…リリイさんの脱ぎ癖は坊っちゃんは何かから開放されたいからって事に…。
私は何時もリリイさんが警察のお世話にならないかヒヤヒヤしています…」
「やかましい！ アレは奴の性癖だ！」
坊っちゃんが顔を赤くし、リリイさんに指を差すが、リリイさんは「はい？」ともう既に脱いでいた。
それに対して「脱ぐな変態蝶々！」と四ツ葉が声を上げ、スタンガンマニュアルの本を目掛け投げた。見事、リリイさんの頭にクリーンヒット。
そして、ドアが開き…薄ピンクでショートカットの髪型の新人メイドさんが「困ります…。小鳥遊さん、お帰りの車を用意しました…」と言いに来てくれた。
更に9時になった瞬間、寝落ちる坊っちゃん。
…そのメカニズム…めっちゃ知りたい…。
…収拾がつかないまま、その日は屋敷を後にした。
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作者名：キタペン | 作成日時：2018年9月14日 18時
