25話 ハッピーバースデー ページ38
「持てるなら持ちたいけど…今までは…」
「…椿の被害は予想を越えてるし、何か起こった後じゃ遅いからな。…目、瞑れ…」
すっ と私の目を手で隠す四ツ葉。
何が始まるの? と、聞こうとしたが…
―パンパンっ!
クラッカーの音と同時に目を開ける。
でも、其所は今居た家ではない。
…どこまでも真っ白な部屋。しかし、回りに幾つか灰色のドアが存在し、そのドアには頑丈な鎖が絡み付いている。そんな場所。
でも大丈夫。此所には来たことが何回か有る。
クラッカーを鳴らしたのは…
白い猫だ。二足歩行してるけど…。
声は幼い少年。目は赤色で、子供がグルグル渦巻きを書いたような目をしている。
「スノードロップ…」
『うぅん…僕は四ツ葉の力担当だ。名前なんて無いよ』
「無いは無いで呼ぶ時に大変じゃん。私はスノードロップって呼ばせてよ』
『まぁ別に良いけど。四ツ葉まで最近そう呼び出したんだよねー』
スノードロップ。
鏡の国のアリスの物語に登場する白猫の名だ。幼少期にその本を読み…この子に出合った時、そう名付けた。
たまに夢に出る事が有る。四ツ葉も有るらしいが…痛い所ばかり指摘するから嫌、らしい。
『僕の名はさておき!
ハッピーバースデーA! やっと君にギフトを渡せれる!』
待っててね! と、スノードロップは玩具箱の様なケースを引っ張り出し、ゴソゴソ と探し物を始めた。
何かを探す彼に「誕生日もうちょっと先だけど…」と尋ねる。すると陽気な声で『気にしないで!』と答えてきた。
『此ね、本当は君が子供の時に渡す筈だったギフトなんだ! でも四ツ葉ったら『要らない』って拒否してさ…やっっと僕から君にお祝いが出来る!』
スノードロップは嬉しそうな声で箱から見つけ出したギフトを差し出す。
…包み紙が色褪せているが…ボロくは成っていない、小さめのギフト。
『此は君が“昔”抱いた望みを形にしたものだ。今の望みとは違う形かも知れない。でも其は其で“良いこと”だ。此れを手に入れれば元には戻れない。其でも君は飛び込むの?』
武器を持つ事。それは助ける者にも…加害者にもなる可能性があるって事。
でも…私はあの園を守りたい。リリイさん、坊っちゃんの役に立ちたい。…吸血鬼の問題を解決して四ツ葉と一緒に居たい。それだけだ。それだけが望みだ。
だから私は彼の手からギフトを受け取った。
…その瞬間…彼は ニヤリ と笑い、『“生まれ変わった”Aにハッピーバースデーを…!』と言って消えたのだった。
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作者名:キタペン | 作成日時:2018年9月14日 18時