15話 キスについて ページ26
綿貫くんは聞きにくいのか、口を籠らせる。
私は無表情のまま、何を聞かれるかで心臓がバクバクである。
…すると決心したのか、綿貫くんが小言で私にこう尋ねた。
「A…昨日言ってた彼氏でもない同居人とキスしてるって…本当？」
と…。
……。
…ん？ あ…そっち？
…吸血鬼の話じゃないのね良かったぁ…。
いや良くないか。…良くないね、うん。
実際、今日の朝に四ツ葉はキスをしてきたし、昨日は3回もキス(濃厚な方)もした。まぁ、私からはしてないけど。
…どう答えよう。まぁ、私の失言が原因だから正直に言った方が良いかもなぁ。
「うん…まぁ、してるね」
「…。…そっか…そっかぁー…」
綿貫くんは、うーん と俯いてしまった。
どうしたのかな…？
「…綿貫くん？」
「…あ…あぁ悪い。 え、えっと…踏み込んだ事聞くかもだけど…Aは好きなの？ その同居人にの事…」
「好きは好きだけど…恋愛感情は無いかな」
「じゃあ何で…」
「向こうが私の事…好きらしいから、かな」
綿貫くんは「へっ…？」と固まってしまった。
綿貫くん…本当にどうしたのかな？
四ツ葉の常套句は「愛してる」である。
が、私は愛が分からない為、愛してはいない。
…しかし、お互いの事は“好き”ではある。
まぁ、四ツ葉の好きは恋愛感情も有りでの好き、らしい。…が…私は恋愛感情以外の好きである。
私たちはお互い好きでも違いがある。
「…変…かな？ こう言うの？」
「…変かもなー？ 普通は恋人同士がやるもんだしー？」
「ま、本人達の価値観にもよるけど」と綿貫くんは答える。
「…いやー、変な事急に聞いてゴメンなぁ。Aが好きでも無い奴に無理矢理キスされてるのかと思ったから…その…」
気まずそうに目を逸らす綿貫くん。
心配してくれただけなのかな…？
「大丈夫だよ。心配してくれてありがとね」
「別に心配とかじゃなくて…いや良いや。
でも、本当に嫌とかじゃないんだよな…？」
…嫌…？四ツ葉とのキスが…？
考えた事も無かった。
…すると、綿貫くんは何時もの笑顔で優しく私の頭を撫でた。
「良いや。本当に変な事聞いてゴメンな！ でも何か有ったら相談してくれよ？
男は狼だからなー？ 気を付けないと、だぞ？
俺はお前の事“妹”みたいに思ってんだからな？
…さてっ…」
「龍征！？」
「…。おー真昼！」
ドアを豪快に開けて入ってきたのは城田くん。
綿貫くんは城田くんの方へと歩いて行った。
最期…何て言おうとしてたのかな…？
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作者名：キタペン | 作成日時：2018年9月14日 18時
