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あのときはチャラさの象徴に思えた金髪も、
不思議なことにここでコーヒーを淹れているのを見ると 落ち着いた、むしろ高貴ささえ感じる。
「どうした？」
私のテレパシーに気付いたのか顔を上げた店長は、そう言って優しい笑みを浮かべた。
訂正しよう。
店長の金髪はやっぱりチャラい。
金髪が、というか 笑顔がチャラいんだよね。伝わるかな。
いや、店長の魅力なんて私以外誰にも伝わらなくていいんだけど。
『なんでもないです』
私の言葉を聞いて ふっとまた微笑むと、店長の眼差しは再び手元に戻される。
一目惚れだった。
海で出会ったときも、店で初めて会ったときも。
この人だって思った。
今までチャラい人を好きになったことはなかったし、どちらかというと好みは地味な人だったんだけど。
誰がどう見たって私が店長のことを好きなのはあからさまなのに、
それが当たり前とでもいうような、なんともない感じなんだ。
その平然とした態度に、息つく間もなく惹きつけられてゆく。
私は金指に言われたように手を止めないことだけは意識しながらも、暇になると視線はいつも店長を探していた。
カランカラン、
軽く響く音と共にお客さんがやってくる。
うちは自動ドアだけどドアベルがあって、こういうカフェの雰囲気を大切にするのが店長のこだわりだった。
『いらっしゃいませ、こんにちは！』
「いつものお願いします」
慣れた手つきでカードを差し出すこの人は、常連の作間さん。
『アイスでよろしいでしょうか？』
「はい」
『お会計こちらになります』
「あれ、新メニュー出したんだね」
『これ、予告です。来週からなので、是非』
「店長には告白した？」
『…してません！』
作間さんはもう5年もここに通っているらしい。
レジ奥で私と店長がやりとりしてるのを見て、こっそり「好きなの？」と訊いてきたときは、本当に変な人だと思った。
それでも仕事はできるらしいから、社会人というのは不思議だ。
毎回、こうやって脈絡もなく進展を訊いてくる。
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作者名：きたほ | 作成日時：2021年2月4日 17時
