薄明に旋律 (ページ9)

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すると、矢花くんはかばんからノートを出してこちらへ差し出した。めくると五線譜に音符が記されている。

『もしかして…自分で作ったの？』

控えめに頷く。

「先生に楽譜貸してもらって簡単なクラシックも練習したことあるんですけど、やりたいのは作曲で。自己流で」

『え、すごい！すごいよ！なんか有名な曲なのかなって思った』

思わず大きな声が出る。
楽譜はあまり読めないけれど、なんだかその音符ひとつひとつにわくわくさせられて意味もなくぺらぺらとページをめくった。終わったところで目線をあげると、矢花くんは左手で頭をかきながら苦笑いしている。

「そんなに誉めてもらえるとは…。初めて人に聴かせたんで」

『え、そうなの！？私でよかったの？』

図らずも図々しいお願いで大切な機会をもらってしまったみたいだった。