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それからデザートまではあっという間だった。
お礼というのは、このお気に入りの隠れ家的レストランでご馳走してくれるってことだったんだろうか。
『美味しかった』
「うん」
すると。店内に流れていた洋楽が止まる。
「ご馳走したいっていうのももちろんあったんだけど、あの」
「ピアノを、披露します」
そう言って、矢花くんは店の隅にあったピアノへ向かった。暗めの照明に紛れて気づかなかった。ここはそういう演奏ができる場所なんだ。
軽やかな音。
生のピアノの音、久しぶりに聴いた。
丁寧なタッチとどこか懐かしいメロディー。
音色に聴き入っているうちに、気づけば1曲が終わっていた。
他の数人のお客さんからも温かな拍手。そのなかで一礼すると、照れた表情で戻ってきた。
「練習の成果、どうしてもAさんに聴かせたくて」
すごかった。心に沁みた。浮かぶどんな言葉も、気持ちをそのままには表してくれなくて、ただ頷いた。
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作者名:きたほ | 作成日時:2020年8月18日 2時