薄明に旋律 (ページ21) - 小説

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キーボードを貸したことによって、矢花くんは音楽室のピアノを弾かずに帰るようになってしまった。思い返してみると、あの何気ない音色が恋しくなってくる。学校で話す機会がないのも少し寂しいような。

キーボードのお礼に連れていきたい場所がある、と言っていた。どこかは教えてくれなかった。ただ来週の木曜日、バイト終わりに会いに来てほしいとだけ言われていた。
今日がその日なのだが、なんだか落ち着かない。自習中も上の空だった。あれこれ考えたって仕方ないのに、考えずにはいられなかった。そうか、楽しみなのか。今になって気づく。

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作者名：きたほ | 作成日時：2020年8月18日 2時