薄明に旋律 (ページ16)

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「こんにちは」
家のチャイムが鳴った、月曜の放課後。ここのところ3年生はずっと午前授業なのだが、わざわざ学校で待つのも変かなと思って一度家へ帰ってきていた。6限まで受けてきた矢花くんが家にやってきたのだ。

『迷わなかった？』
「はい、地図わかりやすかったですよ」

そう微笑んで紙切れをポケットへしまう。
昼休みに、手書きの簡単な地図を渡した。2年生の教室を覗くのにはとても勇気がいったけれど、矢花くんの群れてない感じはなんとなく察することができた。

『これ、一応ケースに入ってるんだけどうまく背負えるかな』

何年前のものかもわからないキーボードケース。肩ひものところとか細かい部分がかなりボロボロだ。

「あっ」
小さな声と共に、キーボードががたんと床に落ちた。切れた肩ひもは力なくぶら下がっている。

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