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「はい」
『いいの?ありがとう』

手渡されたのはコーヒー。近くの自販機で買ってくれたものだ。

「余ってるからって2つ持たされたんですけど、実は俺ハンバーグ苦手で…ありがとうございます」
『いやいや、こちらこそだよ』

ひっそりと静まった公園のベンチで、あったかいハンバーグ弁当をいただく。

いただきます、と声を合わせる。

矢花くんは淡々と弁当を食べ始めた。ハンバーグ苦手なんて珍しい。けれど、かといって鮭が好きなわけでもなさそうだ。リアクションが、薄い。

私はお腹が空いていたのもあって、そしてハンバーグを最近食べてなかったのもあって、ものすごくその美味しさが沁みた。冷たく乾いた空気も、より美味しさを引き立てている。

「美味しいですか?」
『うん』

よかった、と言って矢花くんは微笑むと、また弁当を食べ始める。
食事中ってどのタイミングで喋ったらいいかわかんないから難しい。どうしても無口になってしまう。私も淡々と食べ進めながら、時々矢花くんのほうを見ていた。
すると、厚焼き玉子を口に運んだとき、それまで力の入っていなかった口角が上がった。

『私のも食べる?』

「え?」

あまりにも美味しそうに食べるから、つい、言ってしまった。
いいんですか、と遠慮しながらも箸でそっと持ち上げる。

「やさしい」

そう、ぼそっと呟いた。

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作者名:きたほ | 作成日時:2020年8月18日 2時

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