薄明に旋律 (ページ12)

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「暗くなっちゃったからちゃんと送ろうと」

こんなこと言われたことなくて、ドキドキしてしまう。街灯があまりなくてよかった。顔が赤くなる──かはそういう経験をしたことがないからわからないけど、もしそういう体質ならきっと凄く赤くなっているはずだ。

『いいの！ここまでで大丈夫だから！明日からまたバイト頑張ってね』

自分が想像していたより早く口が動いた。きっぱりと言い過ぎてしまったかなと不安になるも、彼は"はい。"といつものトーンで受け入れた。じゃあ気をつけて、と続ける。

正直、がっかりしてないといえば嘘になる。しかし、大丈夫というのは本当だった。ここから家まであと15分は歩くので彼に申し訳ないし、いつも1人で帰っているわけだし。
ここまでありがとね、と軽く手をあげると、彼は軽くお辞儀して、本当に上げたのかわからないくらい、ほんの少し手をあげた。それがなんだか嬉しくて、私は今度は大きく手を振った。向き直って歩きだす彼のスピードがなんだか遅く感じた。

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