272話 ページ37
ホークスside
「私も、同行させてもらえませんか」
突如聞こえたその声は、少しだけ掠れていた。
声のした方へ目をやる。
そこには予想通りAちゃんがいた。
「同行させてほしい」というのは、恐らく先程俺たちが話していたチームアップに対してだろう。
たしかに彼女は大人顔負けの実力を持っている。
それに、先の戦いで新しい能力が解放されたと聞いた。
悪が蔓延る今の社会で、彼女が活躍するのは間違いない。
だけど。
「だめだよ」
君はまだ、子供なんだから。
ま、掃討作戦で最前線に動員した俺たちが言えたことでは無いけど。
「なんでですか」
まっすぐとこちらを見据える。
その瞳は以前と違うように見えた。
「自分の父親を傷つけた最低な人間だからですか？」
「それは違う」
自虐的に言い放ったそれに、つい反論してしまった。
過去は消えない。だけど、それでも君は前を見て、正しくあろうとしてる。
だからそんな風に言って欲しくなかった。
「君はまだ仮免だろう？
実力があっても、免許を持たない者に任せるのは ほつれを産む原因になり得る」
ジーニストさんの言う通りだ。
資格を持たない市民たちが武器を持ち、ヴィランと戦闘したことで被害が被害を呼ぶ状況になっている。
そんな中、ヒーロー免許を持たないAちゃんが活動するということは、間接的に資格非保持者への武器の保有を認めることに——————
そこまで考えたところでハッとする。
そして、この話題を出してしまったことへの後悔が押し寄せた。
彼女は————Aちゃんは、
「免許があればいいんですよね？」
そう言ってスマホを手に取り、そのカバーの中から手のひらサイズのカードを取り出した。
「ありますよ。ほら」
ヒーロー免許を、会長から直々に渡されていたんだった。
すっかり忘れていた。
心の中で頭を抱える。
もう彼女を止める術は無い。
きっとここで同行することを断っても、一人で勝手に行ってしまう。
それなら俺たちが一緒に居て、見守っていた方がいいのでは。
Aちゃんの瞳が前と違って見えた理由が分かった。
彼女が死に対する恐怖を捨ててしまったからだ。
生きることへの執着よりも、人々を守り、救けることを選んだ。
ヒーローとしては百点満点だ。
その証拠に、優しく微笑みをたたえる彼女を、俺は美しいと思ってしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1886人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
yukimi(プロフ) - 最高すぎます！何気に相澤先生の絡みが大好きです！！ (2023年3月30日 2時) (
レス) @page38 id: a25b1c0c0d (このIDを非表示/違反報告)
あああああ - 追記:↓続編とかでやってくれませんか！ (2023年3月8日 13時) (レス) id: 7d0fba99d3 (このIDを非表示/違反報告)
あああああ - すみません。途中からでも良いので、夢主を闇堕ちしてください！ (2023年3月7日 22時) (レス) @page19 id: 7d0fba99d3 (このIDを非表示/違反報告)
黒弧(プロフ) - ミルコとの絡みも見てみたいなー←なんて← (2022年9月16日 3時) (レス) @page7 id: 4b13e88e37 (このIDを非表示/違反報告)
とろろ1565(プロフ) - 面白くてもう一から一気見しちゃいました！！！好きです！ (2022年5月22日 19時) (レス) @page7 id: 6849bf532f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ひとや | 作成日時：2021年8月31日 22時
