smile. (ページ23)

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F*

渉も寝たから

窓際に椅子を二つ移動させ

Aと話していた

普段二人で飲むことはないから

少し新鮮に感じる

俺たちは家でお酒を飲まないし

ましてや二人でどこかに出かけることもない

「なんか久しぶりに思いっきり笑った」

「楽しかったな」

梓といるときのAは

本当に楽しそうに笑うから

安心する

渉にも最初よりは

気を許しているように感じる

Aは誰とでも

すぐに仲良くなれるけど

本当に気を許している相手はすごく少ない

俺や梓以外の人の前だと

ふっ、とスイッチが入る

明るく、いつも笑顔で話上手な

"いい子"だ

大勢の人に見せている顔は

そっちの方で

確かにそれもAなんだけど

弱さや脆さ、

人に見せたくないところを隠すため

大袈裟に演じているようにも思う

夜景の見える窓に二人が映る

外を眺めていたAと

不意に窓越しに目が合った

「夜の明かりはなんか寂しくなる…」

外を見ながら

ポツリとAが呟いた

「うん…分かるよ」

なんとなく１人きりな気分になる

*