育成記録

生まれました。Ki ページ5

時計を見ると、22時過ぎ。

そろそろ生まれてもいいのになぁ。

うんともすんとも言わない卵を見つめる。

ニ「ねぇ、ミツー。まだぁ？」

卵の真ん前に陣取って、俺以上に待ちわびてるニカ。

早く帰ろうと飯を断った俺を怪しんで、ウザ絡みしてきたから仕方なく話したら、俺も見るってついてきた。

生まれてから見せるつもりだったのに。

北「まだだなぁ」

ニ「いつ生まれるのぉ？」

北「わかんねぇよ」

ニ「う〜〜〜。俺も飲む！」

勝手知ったるなんとやらで冷蔵庫からビールを取り出すと、一気に飲み干した。

もう１本取り出して、俺の隣に座った。

北「お前、一気飲みなんかしたら悪酔いすんぞ」

ニ「しねぇもん」

素直に返事はしないけど、気になってるのか２本目はゆっくり飲んでる。

そのまま話をしてると、ニカがうとうとし始めた。

手に持ってるビールの缶を回収すれば、空っぽ。

こんなんでちゃんと見れんのかな。

ため息をついて、缶を片づけるのに立ち上がる。

キッチンから戻ると、俺たちが眺めてたのと逆側の殻が少し割れてた。

はっ？いつの間に？

卵の前にしゃがんで向きを変えると、穴が空いてて中で動いてる小さい姿。

おおー、動いてる動いてる。

すげぇ、マジで生まれるんだ。

あ、ニカ起こさないと。

床に転がってるニカを揺するけど、うめくだけで起きそうにない。

しーらね。

早く生まれてこいよー。

卵をかるくつついてみた。

途端に、パリパリパリッて縦にヒビが入っていく。

えっ？あっ、えっ？これもしかして触っちゃダメだったとか！？

下の方までヒビが入り、そのまま静かになった卵を不安まじりに見守る。

穴からもう一回覗きこもうとした時、パキンッて殻が割れて、目を擦ってる男の子が出てきた。

えっと確か、名前だったよな。

ぼんやりと俺を見上げる男の子に呼びかけようとした。



ニ「ひろみちゅ〜」



北「っ！？(このバカッ！)」

したのに、酔っ払いが起きてきたうえに、声かけやがった！

しかも何が ひろみちゅだこらぁ！

肘鉄をニカの腹にきめて床に沈める。

まだ復唱してない、もしかしたら聞こえてなかった？

間に合う！



『ひろみちゅ』



だぁぁぁ！間に合ってねぇぇぇぇぇ！！



こうして、俺とひろみちゅの生活が始まった。
　

育ちました。Ｆ→←生まれました。Ｆ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す